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末崎 孝博(すえざき たかひろ)

小林市野尻町出身、在住。JAこばやし 野尻町 里芋生産部会 副部会長。80代半ばの両親と3人で営農。

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【問合せ先】
JAこばやし 営業販売課
0984-23-1323

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お正月に欠かせない『京いも』

京いもは里芋の1種でお正月の煮しめの定番アイテム。
「お正月にむけて12月中旬から25日頃までが出荷のピーク」。年の瀬が近づくと直売所やスーパーの売り場に並び始めます。
別名を『たけのこいも』ともいい、タケノコのように円すい形で、タケノコの節のような模様が入った、独特の形をしています。長さ20〜30cmのものをよく見かけますが、大きいものは60cmにもなるそうです。京いもは、見た目も味も一般的な里芋とは異なります。簡単に言うと「ホクホクした食感の甘い里芋」。

そんな京いもは、皮をむきやすく、火が通りやすく、煮くずれしにくく、料理しやすい三大条件を兼ね備えた野菜です。野菜料理、特に根菜(その中でも里芋)は洗浄・皮むき・切るという下処理に時間がかかりますが、その点京いもは粘り気もなく下処理が楽。しかも2cm程の輪切りにして水から茹でても5分ほどで火が通り調理も短時間で済みます。ちなみに、まれに感じる里芋のチクチク感というか手が痒くなる感じは、里芋のぬめり気に含まれる成分が原因のため、京いもにはそれもありません。
誰にでも食べ易い味わいなのはもちろん、時短料理を目指す人にこそ使ってほしい野菜の一つだと、料理するたびに思います。

希少な里芋。別名『台湾いも』

そんな便利な京いもですが、関東で販売されているのは見たことがありません。
実は、京いもは宮崎県が日本一の産地で、東京市場で90%(みやざきブランド推進本部)、大阪市場で98%が宮崎県産(同)、さらに全国の80%以上を小林市産が占め、その出荷量はわずか160トン(平成28年度 JAこばやし)。全国の里芋の流通量の1%にも満たない、実に希少な里芋なのです。取材中も「京いもは高級品だから」と何度も耳にしました。主に京都や東京の料亭に卸されることが多く一般にはほとんど流通していないようです。

そんな京いもは、戦前から市内で自家用に栽培されており正確な起源は分かっていません。ただ、地元では『台湾いも』とも呼ぶことも多く、明治時代に台湾から入ってきたのが原種だとか。現在も各農家さんが前年に残した芋を種芋として栽培、種を継いでいます。
『京いも』という名前は、昭和30年頃に農協や行政が全国に売り込みに行った際に京都で美味しい里芋料理を食べ、「この料理にあやかりたい」との思いから付けた、とか「京都の料理人に一番好評だったから」など諸説ありますが、平成14年「みやざき 京いも」として小林の京いもは宮崎ブランド野菜に認定されました。

作業適期を逃さない。几帳面に、正確に

今回、JAこばやしの指導員さんからの紹介で末崎さんにお話を伺いました。
末崎さんは京いもの他に大根やらっきょうなどを栽培。雑木林の横に広がる数枚の広い畑で、毎年畑を変えながら京いもを栽培。2018年は20アールの畑に京いもを植えました。
栽培管理の山は2つ。一つは3月中旬に種芋を植え付けた後、収穫までに3回程度の土寄せと追肥を行うこと。二つ目は10月中旬~11月上旬に収穫した後の貯蔵作業と出荷作業です。

末崎さんが特に苦心しているのは一つ目の作業。作業の話になると物静かな末崎さんもやや饒舌に。適期に土寄せをし、脇芽を取って芽は一本だけ残し、追肥もしつつ、雑草が日当たりを阻害しないよう除草作業も兼ねて行う大事な作業のよう。ただ、京いもは夏に肥大が進むためタイミングが大事。土寄せができるまで大きく育つのは5月初旬。例年5月末〜6月上旬には梅雨入りするため、梅雨入り前に2回、梅雨の中休みを見計らって1回、7月前半までに作業を終えられるよう気をもむ、と話してくださいました。
「末崎さんは真面目な方。作業を適期に逃さずきちんとやっている。品質的も良く、A品率も高い」と指導員さんも太鼓判を押します。

熟成させて、ホクホク甘みが増す

土寄せした後は、京いもを見守る、長い3ヶ月。6月末〜9月末は畑の様子を見て回りながら、必要に応じて病害虫対策を施しつつ、10月の収穫を待ちます。
末崎さんは今期、種芋を植えつけてから約半年後の10月19日にようやく収穫を始めました。京いもが他の里芋や野菜と違うのは、ここからさらに芋を熟成させるために畑で貯蔵することです(!)。そうすることで完熟し、ホクホク感と甘みが増す、と末崎さんも指導員さんも自信をみせます。

熟成方法はシンプル。収穫後の畑に大きな長方形の穴を掘ると、そこに京いもを寝かせて重ね、土をかぶせます。この作業を「伏せ込み」といい、穴を掘るのも大変なその大きさにおどろきました。
京いもは日本一大きい芋で、大きいものになると1本1.2~1.3キロにもなり、掘り上げるだけでも一苦労。末崎さんの今期の京いもの収量は約2トン。収穫1日に対し、伏せ込み作業で3日ほどかかったそうです。
こうして収穫後、約1ヶ月ほど土の中で貯蔵させます。風冷たい頃の大変な仕事ですが、1本1本手作業で伏せ込み、おいしさを追求します。

出荷作業は家族3人で仕上げ

12月10日の取材日。京いもを掘り起こすと、洗浄機にかけるため軽トラックを走らせた末崎さん。実はここから先に京いも最大の仕事が待ち受けています。
末崎さんは栽培暦30年以上の両親と3人で営農。主な栽培管理は一人でこなしますが、出荷作業に入ると3人全員で行います。私も末崎さんのお母さんに教わりながら、出荷作業、皮むきの作業を体験させてもらいました。
道具は、木の又に針金をつけた手作りの皮むき器と、包丁、手袋。まず上部を少し切り落とし、皮むき器で半分くらい皮をむき、仕上げは手作業で白い根っこまで取り除くと、ようやく京いもらしい縞模様が現れます。

つっかえながら、お肌に傷をつけないようにすると、末崎さんのご両親のようになかなかスムーズにいかず、苦戦しました。皮むき後は数日風にあて表面を乾かしたら規格ごとに箱詰めして出荷。「京いもは化粧をしてから出荷するから」という言葉に納得。
おせち料理で京いもは煮しめになります。煮しめは、山と海の様々な食材を一つの鍋で料理するため、「家族の結びつきが強いものに」、「みんなで幸せに過ごせますように」、と願いを込めて作られます。皮むきの光景におせち料理の意味を実感したひとときでした。

  • ブログページ―おいしい野菜の見え方
  • 取材:大角恭代

    小林市在住。大学卒業後、㈱ファーストリテイリング勤務。2011年2月Uターン。野菜ソムリエ。たまたま食べた無農薬無化学肥料栽培の文旦に衝撃を受け、おいしい野菜の育ち方に興味をもつ。おいしいと思う野菜があると畑にいき、生産者と想いを語る。

    夢は『いつでもどこでもおいしい野菜が食べたい、広めたい』。

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