ちいさなこだわり~食・旅・短歌~

渡邉円

1982年串間市生まれ。
ある日短歌と出会い帰郷。
美味しい食べ物に囲まれて、宮崎ライフを満喫中。
「都井岬短歌大会」「歌垣」など宮崎県内で短歌イベントを開催。

いもがらぼくと

「いもがらぼくと」とは、宮崎の男性の性質をうまい具合に表現した「肥後もっこす」や「薩摩隼人」と同じ部類の言葉だ。

いもがらは里芋の茎の部分で、シャリシャリとした触感を味わう夏の野菜。うすみどり色をしていて、繊維と繊維のあいだにスポンジのような空泡が見られる。宮崎では生で刺身のツマに使ったり、さっと茹でて酢の物に仕立てたりする。

宮崎の男性って「いもがら」を「木刀」に仕立てたようだよね??確かに見た目は厳めしいけれど内面はさわやかでふわっと優しい雰囲気の男性が多いように思う。対して、宮崎の女性は「日向かぼちゃ」と称される。

民謡『いもがらぼくと』は昭和30年に宮崎市が市政30周年記念行事として新民謡を公募した際に誕生した。現在も『ひえつき節』や『刈干切唄』にならんで宮崎の民謡として歌い継がれており、結婚式やお祝いの席で聞く機会がある。

♪♪♪

腰の痛さ~よ~ 山畑びら~き~

春はかすみの日のながさ

焼酎五合の寝酒の酌に

おれもよめじょが欲しゅなった ヤレ

もろ~た もろたよ いもがらぼくと

日向カボチャのよか嫁女

ジャガジャガマコチ エレコッチャ~

 

※こちらで聞けます → http://www.yamanashinouta.com/music/me06.mp3

『いもがらぼくと』の誕生秘話を審査員のひとり中村地平氏は著書に残している。

新民謡の応募作品には、残念ながら当選作がなく結局二席の黒木淳吉氏の「のさん節」を基調に中村地平、黒木淳吉、黒木清次と三人で新しい作品を作り出すことになった。目標は、熊本の「おてもやん」を凌ぐ作品を完成させることである。その目的を達成するため、三人が掲げた条件が以下である。

1.素朴で善良であるが、いくらか怠惰なところのある日向人の性格をえがきだすこと

2.生活の裏づけがあること

3.性格と生活とをはっきりさせるために、独身から結婚、出産など、人間の運命をえがくこと

4.観光宣伝にむすびつけるために、名所名跡をおりこむこと

5.日向弁を多用すること

 

…完成した作品を(標準語訳)付きでご紹介したい。

 

【1番】尾鈴ン山には春霞 だれくでしもた(つかれてしまった)こば(伐採場)びらき だれやみ(つかれ休めの焼酎)のんでほたり寝る(ねてしまう)おれも嫁女がほしゅなった はやく貰わにゃ まやん(老爺)になっど(なるぞ)嫁女もたんた(のは)お前だけ

【2番】菜の花ルーピン咲くころに やっと嫁女を貰れだした 日向かぼちゃのよか嫁女 今年しゃ田植が楽しかろ もぞらし(かわいい)嫁女がよくきたもんじゃ ぐわんたれ(つまらん)お前も ほいっぺ(一生懸命)やらにゃ

【3番】嫁女をつのじ(つれて)鵜戸まいり 青島みやげに夫婦びな シャンシャン馬の七峠 ヒャラヒャラヒャアット七ツ浦 まこちのさんね(つらいね)しょのませなんな(羨ましがらすな)ほめいた(熱っぽくなる)こっちゃろ赤毛布

【4番】今年もげど(外道)がしけがきた 土手がきれたらそらぼく(たいへん)じゃ 稲をしもたらてにゃわんど(手に負えないぞ) かかよはめつき(努力しろ) あんべらしゅ(うまく、上手に) お前もはりこめ(努めよ)いもがらぼくと 嫁女がせちこち(あわてて)もぞなぎが(かわいそうだ)

【5番】秋はよかしめ(収穫)ほぜ(豊年)日和 かかも珍しゅながぎもん(長袖の着物) ぼうど(みんな)はりくじ(奮発して)神酒のめ のんだら夜神楽せろじゃねか あんまりいくろち(酔っぱらって)ざまたれねえど(様子がない) てげに(たいていに)しておけ ぎす(空元気)だすな

【6番】やいや霧島雪じゃがい 千切つくのはきちけんど(つらいけど)来年がくれば人の親 のさん(つらい)よだき(したくない)は言うちゃおれん じゃがじゃが(ほんと、ほんと)まこち(じっさい)えれこつ(りっぱなことを)言うが 薬缶たぎり(一時にカッとなって、すぐわすれること)じゃだちもねど(仕様がないぞ)

 

ああでもないこうでもないと試行錯誤の後に完成した作品をレコード会社に送ったところ、あまりの方言で外国語のようで意味不明と言われ現在の形に相成ったのだそう。確かに元唄の「あんまりいくろち、ざまたれねえど、てげにしておけ、ぎすだすな」という歌詞では、他を寄せ付けない感じがするね。

ちなみに、わたしが好きな日向言葉は「ですです」と「だからですよ」。このあいだ「だからですよでございますよね」というスゴイのも聞いた。深い。

【「ですです」と勢いのよい返信はできずに「です」を短く返す】渡邊 円

参考文献:中村地平『日向』鉱脈社みやざき21世紀文庫

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更新日時:2014.08.21(木) 00:00:26

へべすサワーを君と飲むとき

たのしみは~に始まる橘暁覧(たちばなのあけみ)の連作は『独楽吟(どくらくぎん)』に収められている。

【たのしみは 妻子むつまじく うちつどひ 頭ならべて 物をくふ時】

【たのしみは 朝おきいでて 昨日まで 無かりし花の 咲ける見る時】

【たのしみは まれに魚烹て 児等皆が うましうましと いひて食ふ時】

【たのしみは 昼寝目ざむる 枕べに ことことと湯の 煮えてある時】

【たのしみは 機おりたてて 新しき ころもを縫ひて 妻が着する時】

食べものに関する歌も多くある。生活のよろこびって今も昔もそう変わらないらしい。

以前、短歌の先輩が「食事と短歌の宴」(うたげって言葉すてきですよね!)を開催した際に、

「皆さん【たのしみは~】ではじまり、【~とき】で終わる短歌をつくってみましょう!」

という演出があった。わたしも楽しく参加して、夏になると毎年思い出すような短歌ができた。

短歌は、どこからどこまでが真実であり虚構なのか…と聞かれることがよくある。それどころか、短歌に詠まれていることがすべて事実であると思われているふしもある。こんなことを言うと怒られてしまいそうだが、歌がよくなれば事実を変えてもかまわないのだとわたしは思っている。心の事実を短歌に表現できれば、そこに登場する人やモノが誰であろうと何であろうと構わない…。うーん、場合によって。なんですけどね。でも、真実だって思って読んでもらえるのは大変ありがたいのです。

 

例えば、今回のお題の短歌は31文字のうち

【たのしみは】の5文字 + 【とき】2文字 = 7文字を「必ず使う言葉」としている。

31文字 - 7文字 = 24文字を自力で生み出すのだ。声に出してみるのもいい。わたしは、たいがい喋りながら短歌をつくる。

【たのしみは ふふふふふふ ふふふふふ ふふふふふふふ ふふふふふ とき】

「たのしいとき、たのしいとき。なんだろう。お喋りしてる時って楽しいよねぇ。やっぱり2人がいいな。ちょっと近い距離で。となるとお酒かなぁ。」

【君と飲むとき】

結句は決まった。

「何を飲もうかなぁー。せっかくだから爽やかな季節を感じられる、香りの伝わるような飲み物がいいな。ビールじゃちょっと普通だし。宮崎の、宮崎の…へべす!いいね、へべす!」

【宮崎のへべすふふふふ】

へべすビール、へべすチューハイ、へべすモヒート、へべすワイン、へべすウォーター、へべすサワー!へべすサワー!いいね。へべすサワーを、君と飲もう!

【宮崎のへべすサワーを君と飲むとき】

【たのしみはふふふふふふふ宮崎のへべすサワーを君と飲むとき】

よし、いい感じだ。どんな宮崎だろう。どんな2人だろう。季節は夏の始まり?おわり?恋のはじまりの2人の会話もいいけど、より親密さを出したいな。もしかしたら終わりに向かっているかもしれない恋。それを感じさせるのは、めぐる季節。太宰も「明るさは滅びの姿だろうか」って言ってたし、夏のおわりでいこう。明るいわー。

という感じで、約5分ほどで完成した。

【たのしみは夏のおわりの宮崎のへべすサワーを君と飲むとき】渡邊 円

へべす蕎麦。

夏の盛りをむかえた瞬間、夏ももう終わりなのだと感じてしまう。暦のうえでは正しいのだね。人間も自然である。

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更新日時:2014.08.07(木) 00:00:38

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