田鹿の「日南」海幸山幸自慢

佐村河内さんの一連の騒動を、「食」のマーケティング的に見てみた。~前編~

最近、メディアを騒がせている佐村河内さんの問題。耳が聞こえない作曲家として有名でしたが、実は耳は聞こえていて、しかもゴーストライターがいたというものです。僕は音楽的センスが全くなく、カラオケで歌っても周りがリアクションを取りづらい空気になってしまうのが悩みなくらい音痴なので、彼の音楽がどんなに素晴らしいのかどうかは分かりません。しかし、「騙された!」「嘘つき!」と反応している人がいるのを見ると、「音楽そのものの価値」以外の付加価値が付いているんだと感じました。 具体的に言うと佐村河内さんの音楽を聴いている人は「いい音楽だなぁ」という純粋な音楽鑑賞と、「これを耳が聞こえない人が作ったのかぁ」というストーリーへの共感の二つを消費しているんだと思います。今回の騒動を見て、「音楽そのものが素晴らしいから誰が動作ってても別にいいじゃん。」と思う人もいるかもしれませんが、それは音楽そのものを評価していた人であって、おそらく多くの人は音楽そのものへの評価と、耳が聞こえない人が作った曲というストーリーと一緒に評価していたんだと思います。なので、「騙された!」と思う人が多いんだと思いました。 このような例は、何も音楽業界だけに限ったことではありません。食の業界にも同じことが言えます。例えば、青森県弘前市の、木村さんが作った「奇跡のりんご」。いつも一瞬で完売するそうですが、これは別に「りんご」そのものへの価値だけではなく、「木村さんが無農薬・無肥料で作ろうと、一時は自殺まで考えるくらい悪戦苦闘、試行錯誤を続け、てやっと成功したリンゴ」というストーリーが付いているからこそ人気が殺到するわけです。りんごの味だけだと、おそらくもっと糖度が高くて美味しいものがあるはずです。しかし、木村さんのストーリーがあるからこそ、1個1000円であろうと、2000円であろうと一瞬で完売するわけです。購入者はもはや、そのリンゴを通して木村さんのストーリーを買ってるわけで、もはやリンゴを買ってるわけではないのです。 食を売り出す側にいると、「何に」価値を感じてもらもらいたいのかを、常に考えています。「商品そのもの」の価値はもちろんですが、そこに何を付加できるのか。そして、それはどの流通、販売チャネルと組むのがいいのか、ということと直結します。  

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更新日時:2014.02.16(日) 14:27:55

「日南 農家と漁師のごちそうバル」ごめんなさい、完売してしまいました。

新年は3日に更新し、今回は18日になってしまいました。今年に入って、3日づつ遅れておりまして、こういう少しの気の緩みが行く行くは大きな波となって、襲い掛かってくるようですので、ちゃんと1日、15日の更新を頑張ります。 さて、1月24日に宮崎市のカリーノ地下1階、ラディッシュセブンさんで行われる、「日南 農家と漁師のごちそうバル」。農家と漁師のトーク・セッションに興味をいただき、60席用意したチケットは即効で完売。なんとか10名分は席を補充したのですが、それもすぐに完売してしまいました。チケットをご購入いただいたみなさま、本当に有難うございました。チケットを購入できなかったみなさま、本当にすみませんでした。完売というのは、めでたいようでありますが、マーケティング的には機会の損失であり、市場ニーズを見誤ったわけで、それはそれで反省でございます。確かに日南の旬の海幸山幸が揃い、生産者のトークセッションがあり、お酒がつき、素晴らしいシェフが料理を提供して、4,500円は安いですね。。。 お手頃な価格なので、みなさんに日南の食を堪能していただけると幸いです。 しかし!大好評を頂いている企画ということもあり、24日~31日も同じくラディッシュセブンさんで日南フェアを行います!こちらは生産者たちのトークセッションは無いのですが、日南の旬な食材をふんだんに使った美味しい料理が提供されます!日南パエリア、日南原木しいたけのサラダ、カツオめし、美味しそうな料理が並びます。ぜひ、みなさんお越しくださいませ。 ラディッシュセブン様サイト:http://la-dish.com/?p=757  

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更新日時:2014.01.18(土) 11:33:59

日本全国のお惣菜が全世界で楽しめる社会へ(後編)

いまでは、メディアでの紹介も増え、サービスは順調のように見えるが、実はこれまで、たくさんの試行錯誤をしてきた。 「おかん」のサービスはお惣菜をネットで販売するサービス。サービスがスタートした時に想定していた顧客は、 ① 忙しいビジネスパーソン ② 共働きや子育てをしている主婦 ③ 子どもや両親への仕送り の3つだった。特に、ビジネスパーソンは家で自炊しないだろうから、惣菜で済ますメインの顧客になるのではないかという仮説に基づいたターゲット設定である。もちろん、リサーチ行なった上でのターゲット設定であった。     しかし、この仮説は外れる。そもそも、忙しいビジネスパーソンは自宅でご飯を食べなかった。沢木社長の当初の目論見は外れたが、ここからの「現状把握→分析→改善施策の実施」のサイクルが素晴らしく的確かつ、素早かった。 家では食事をしないビジネスパーソンにサービスを使ってもらうのであれば、家ではなくオフィスに届けたらいいのではないか、という仮説を再度立て、オフィスグリコならぬ「オフィスおかん」のサービスをリリースした。これが大反響を集めた。情報感度が高く、少しハードワークな!?IT系の会社から続々と問い合わせが入るようになる。会社側の名目は社員への「福利厚生」である。同じオフィスで食べるのであれば、お菓子よりも無添加のお惣菜の方が体にもいいし健康的だ。社員の健康が増進されれば、それは結果的に会社の業績につながるであろう、という会社側の意図だ。導入会社の社員の評価も上々だという。販売相手、という点での仮説は外したが、最終的なターゲットは「忙しいビジネスパーソン」で間違っていなかった。     何か事業を行うときに大切なことの一つに「3手の読み」という概念がある。棋士の羽生善治さんもよく言っているが、①自分が何かする→②こういうリスクがある→③このように対応すればOK。 という3段階である。この3段階が見えれば、とりあえずやってみることが大切である。特にインターネットサービスのような、市場環境の変化が大きく、かつ改善施策・軌道修正が行い易い業態は、とりあえず3手が読めればやってみる。考え過ぎて動きが遅くなり、ようやく動き出した時には当初と環境が変わってしまって結局うまくいかない、という状況はよく陥る。色々とリスクはあるけれど、とりあえず3手先まで読めればまずやってみる。そしてやりながら改善施策をうちつつ、軌道修正を行いながら、ベストに近づけていく。という手法は成功させるためのセオリーかも知れない。「おかん」のサービス設計、事業の歴史はまさに、この3手の読みから、改善施策、軌道修正の連続である。おかんのサービスを運営している沢木社長から学ぶものはとても多い。まだ若干28歳である。これからどんなサービスを世に出してくるのか、とても楽しみである。    

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更新日時:2014.01.03(金) 23:23:30

日本全国のお惣菜が全世界で楽しめる社会へ(前編)

世間では毎日のように新しいサービスが立ち上がっている。最近では「スタートアップ」と呼ばれることも多くなったけれども、新規サービスがたくさん生まれることで、社会に存在する課題を解決することにつながる。 「日本にある美味しい、安全安心のお惣菜を消費者に届けたい。」キリッとした目が印象的な若干28歳の沢木恵太社長は愛らしい表情で語る。   沢木社長は大学を卒業して一般企業に入社した。「社会問題を解決する仕事につきたかった。だけど、具体的に何をすればいいのか分からなかった。」そんなジレンマを抱えながらも、毎日懸命に働いていた。残業も多く、徹夜の日も珍しくなかった。食生活も不規則で、食事をファーストフードで済ませることも日常茶飯事だった。そんな乱れた生活を送っていると、当然、健康にも影響がでてくる。20代前半にも関わらず、健康診断で引っかかるようになっていた。 「その時、やっぱり食って大事なんだなぁ、と思いました。」当時の様子を、あたかも他人のことのように冷静に少し距離感をもって話す沢木社長。しかし、未来について語るときは前のめりに、そして熱い。 「でも、その経験があったからこそ、今のサービスがあるんです。」沢木社長は続ける。「今でも当時の同僚とか、コンサル業界にいる友人とか、毎日が終電。休みもほとんど無し、という環境も珍しくないんです。そんな忙しいビジネスパーソンの健康に少しでも寄与したいという思いが、このサービスのベースにあるんです。」 沢木社長が運営しているサービスは地方の安心安全なお惣菜をインターネットを使って、全国のユーザーに届ける、というもの。「おかん(http://okan.jp/)」というWEBサイトで、サイト上で注文、支払いまでできる。(ちなみにこのサイトでは期間限定で日南市のカツオ料理が注文できるので、興味のある方はぜひ注文してみてください。)まだ、扱ってるお惣菜は多くはないが、サービスのコンセプトに合わないものは紹介しないという沢木社長のブレない信念が見て取れる。 前職の会社員時代、福井に出張したときに出会ったスーパーの惣菜が決め手になったと言う沢木社長。「こういう美味しい惣菜を東京でも食べられたら幸せだ。と本気で思いました。」と無邪気に笑う顔の裏には、この社会問題を解決する。という覚悟が垣間見えた。 後編に続く。。。

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更新日時:2013.12.16(月) 13:00:12

日南市の誘致企業「南信漬物」の出逢い(後編)

前編では、南信漬物さんを取り上げた。 長野県の漬物会社「南信漬物」が野沢菜を作っていた日南に工場を作った途端、日南で野沢菜を作らなくなってしまい、途方に暮れていたところに、救世主が登場!それが、建設会社の高橋社長だ。農業法人を設立して、なんと、はじめての野沢菜作りを始めたのだった。   近年、建設業からの農業分野への新規参入が増えていることはご存知だろうか? 高橋さんは建設業を営んでいたが、ある時、「農業法人猪八重ファーム」を設立し、全く異業種だった農業への新規参入を果たした。 それは、地方の建設業にとって今後は、安定した公共事業が期待できず、地方の人口が減り、雇用も減っていく中では、苦戦が予想される。新しい産業への参入は必須だ、と考えられたから。しかし、なぜ新規事業として農業を選んだのか。 実は建設業と農業は相性がいいと言われている。 例えば、建設機械を使って畑を耕せる、余っている土地を持っている、そもそも建設業と兼業している農家のも多くいる、など理由は様々。さらに法律の改正があり、農業法人の設立が可能になったことで、建設業から農業への転換は順調に進んでいる。 しかし、高橋氏はそのような理由ではなかった。高橋氏が農業への参入を決めた大きな要因が前編に登場した南信漬物の倉岡工場長だ。農業法人猪八重ファームを設立した時には、すでに売り先が見つかっていた。高橋氏が作った野沢菜を南信漬物にすべて買い取ってもらうことを前提に農業に参入した。 つまり、農業法人猪八重ファームを設立した時点で、「売り先」をすでに確保していたのである。これは従来の農業は全く違う。これまでの農業はとりあえず作ってみて、その後は販売会社に売ってもらうというモデルで、それ以上のことにはならなかった。 高橋氏と山倉工場長の信頼関係の元に、生産と製造、販売までを協力しながら進めていく。     最近は6次産業化が話題になっている。なんでも6時産業化が実現すればすべてが解決すると言わんばかりだが、生産者が生産→加工→販売までを行うのは、至難の技だ。そもそも6次産業化が重要視されているのは、生産地域からお金が流出するのを防ぐためであり、域内にお金をとどまらせることが大事、という観点からだ。その意味からすると、生産者が販売まで行うことが難しいのであれば、地域内で出来る限り消費者に近い部分までを担うことができれば、そのぶん地域内にお金が残る。 南信漬物と猪八重ファームの例はまさに、この域内にお金を残す取り組みとしては代表的な事例である。日南市が掲げる方針の一つに「儲かる農林水産観光業」というものがある。今回の取り組みは確実に農業の所得をあげる。これからもこれまで域外に流れていたお金を引き戻す取り組みを積極的に行っていきたい。  

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更新日時:2013.11.30(土) 22:32:51

日南市の誘致企業「南信漬物」との出会い(前編)

  こんにちは、日南市役所でマーケティング専門官をやっております、田鹿倫基(たじかともき)と申します。 いまは市役所で働いているのですが、もともとは民間企業に勤めておりました。 日南市の取り組みの一環で民間人のマーケティング担当者を配置することになり、 8月から市役所内で働き出しました。どうぞよろしくお願いいたします。   ※ 筆者イメージ(実際とは異なる場合がございます)     日南市の元気な生産者や企業の紹介をしていきたいと思います。 そこにマーケティング視点も少し絡めていきたいと思います。   今回が初めての記事なのですが、 記念すべき!?第一回は、日南市北郷町にあります、南信漬物をご紹介いたします! ※ 写真は南信漬物工場長の倉岡氏 南信漬物はもともと長野県の企業で野沢菜を中心に漬物を生産する企業なのですが、 約35年前に日南市に二番目の工場を作られました。いわゆる誘致企業ですね。 当時は日南市で採れた野菜を使って漬物や野沢菜、浅漬を作っており、順調に業績を伸ばしていかれました。 日南市の農家としても作った野菜を買い取ってくれる地元の工場はありがたく、 夏にコメを作った田んぼで、冬に野沢菜を作るというサイクルで作付けをしていました。   しかし、事件が発生します!冬のあいだ、野沢菜を作るときに使う肥料が、 夏のコメの生育に影響し、年々コメが採れなくなってしまったのです。 「コメが採れなくなるのは、ゴメンだ。」ということで、野沢菜を作っていた農家は次々に撤退していきます。 「野沢菜を日南で作ってくれると言うから日南市に来たのに。。。」と言うのが南信漬物の工場長を務める倉岡氏。 仕方なく、日南市外の農家さんから野沢菜を仕入れて、漬物・浅漬を作ることになります。     「地元の野菜を調達できないのに、なんで日南市に工場を作ったんだろう。。。」 そんなモヤモヤを抱えながらも、漬物を作る日々が続きました。 しかし、ある日、出会いがありました。 地元の建設会社に勤めていた高橋さんです。   もともとは、漬物を作るときに使う「漬物石」を作っていた建設会社だったのですが、 困っていた倉岡さんのために、なんと農業法人を設立して漬物の原料である野沢菜や白菜などの生産を始めたのです。 これを機に、また地域の野菜を使った漬物の生産がスタートしました。   出会いはステキですね!出会いから新しいことが生まれていく・・・ この出会いが、どう発展したのかは、後編に続く・・・

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更新日時:2013.11.15(金) 23:11:51

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