栗の渋皮煮
子どもの頃から大好きな秋の味覚、栗。焼き栗、茹で栗、栗きんとん、栗ごはん。色々とあるなかで、私が一番好きなのが栗の渋皮煮。そして、毎年秋になると作る味。 もちろん今年も作った。綾町の無農薬栽培の栗を2㎏手に入れる事が出来た。無農薬栽培なので、虫食いが多いだろうと覚悟していたのだが、予想に反して虫食いはほんの数個程で残りはかなり綺麗な状態。一粒一粒が大きくて、そしてコロンと丸い形。これは美味しくなるのではないか…と期待感も高まる。 栗の渋皮煮で一番大変なのが、表面の固い鬼皮剥き。専用のナイフも売ってはいるが、1年の内この時期にしか使わない道具となると、買ってくるという事もないまま今に至っている。毎年、「さあ!剥くぞ!!」と言う時になって思い出す。そして、「まぁ、いっか!」と包丁で剥いてしまうのである。今年は2㎏しか準備しなかったので、1時間ほどで鬼皮は剥けた。ここからは地道な作業。渋を抜くために水と重曹を入れて鍋で煮る。弱火でコトコトと煮ると、すぐにお湯は赤茶色に濁る。火からおろしたら、渋皮に傷をつけないように、ずらした鍋のフタの隙間からチョロチョロと水道水を流し入れ、時間をかけて綺麗な水と入れ替える。そして、再び鍋に水と重曹を入れてコトコトと煮る。この作業を4回繰り返し、約3時間。最後に水と砂糖を入れて煮る。今回は和三盆を使ってみた。その後一晩置いてじっくりと甘みを含ませる。 私が作るものは基本的に薄味で、甘さも控えめ。今年の栗の渋皮煮は栗の旨味がしっかりと味わえる、ホッコリとした味となった。友達やお客様に少しずつお出ししていたら…あっという間に無くなってしまった。食べた人が「美味しい♪」と言ってくれるその一言が、大変だった作業の苦労を忘れさせてくれる。シンプルだけれど美味しいものは手間と時間が惜しみなく使われている。これだけの手間がかかるのだから、市販のモノがお高くなるのも当然なわけだ。 自分で作るからこそ分かる、食べ物への感謝。栗を栽培してくれる方にも、和三盆を作ってくれる方にも感謝。沢山の人の時間と手間と心があるから、美味しいものが頂ける。秋の味覚を噛みしめながら「幸せ」を実感する。日本人に生まれて幸せだ。
更新日時:2015.11.11(水) 19:43:38