堅実な学びから生まれたアスパラガスの果汁-河野仁生

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河野 仁生(かわの きみお)
延岡市北浦町生まれ。「幸せはお金や財産じゃない。夫婦二人で三食食べられることが何よりの幸せ」と、堅実に学び働き続ける73才。
昭和31年現県立農業大学校卒業後、長野県で学び帰郷。2年間営農後、旧北浦町役場に入所。その後旧JA北浦に出向、農協講習所で経理を学び、復職。定年退職後に旧北浦町議員を2期、合併後延岡市議1期務めて就農。アスパラガスをさっと茹でて、じゃことポン酢をかけて食べるのがお好き。

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堅実な学びから生まれたアスパラガスの果汁-河野仁生
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7年前に植えた株

アスパラガスはユリ科の植物で、南ヨーロッパからロシア南部原産の春野菜の代表格。アスパラガスは一度植えるとその根は越冬し、拡大した根から毎年新しいアスパラガスの芽が出て、長年に渡って収穫することが出来ます。その根っこは長く、竹の根っこのように強いそうです。
河野さんは栽培歴7年のアスパラガス農家。自然のままの雑木林が広がる山の麓で、トンビの鳴き声が響くハウスに毎日通います。ハウスの背後には古い大きなお寺。河野さんのハウスに行くのにお寺の参道を通って行きます。お寺の前に広がる畑も、河野さんが路地で旬の野菜を育てている畑です。
ハウスに入ると、あちこちからアスパラガスの芽が出ていました。きめ細かい産毛をまとった淡い紫色の新芽がちょこんと芽を出していて、思わず「かわいいー!」を連発。紫がかっているのはアントシアニンという色素があるためで、元気いっぱい育っている証拠です。「赤ちゃんが大声で泣くのは元気な証拠」と言ったりしますが、まさにそんな様相でした。

1日で15cm

河野さんは、1日2回アスパラガスを収穫します。取材した3月3日は宮崎らしいぽかぽか日和でした。畑の周りには菜の花や梅の花桃の花、花がいっぱい。こんな日は1日2回収穫できるのだそうです。
河野さんによると、アスパラガスは2月〜10月までほぼ一年中出荷するため、季節によってその管理方法を変えるのが栽培のポイント。「夏場は立茎(りっけい)と言って、(アスパラガスの)芽をハウスの天井に届くくらいまで育てるんですよ。(それで葉で光合成をして栄養をたくわえて、その栄養で)摘心をして親木が成熟したら他の根っこから(新しく)生えてくるのを取るんですよ」。頭の中に原稿があるようにスラスラと言葉が口をついて出てきます。

河野さんは、肥料代や売値の計算も暗算でどんどんします。手先も器用。アスパラの収穫には、歩きながら収穫できるオリジナルのアスパラカッターが大活躍。既製品の先を修繕して、アスパラガスを切ったあとそのまま上に持ち上げられるように出来ています。今回私もアスパラの収穫体験をさせてもらいましたが、腰と膝が痛くなりました。アスパラカッターすごい!

取れたてアスパラガスの果汁

最初に訪問した日、河野さんは午後のアスパラガスの収穫を終えたあとでした。私の到着を待っている間にトラクターで家庭菜園用の畑を耕していて、電話をすると「家の庭が広いから車を庭に停めといていいですよ」と、しばらくすると家までわざわざ戻ってきてくださいました。
「ちょっと待っててください」と庭に停めていた軽トラックから緑の箱を運び込む河野さん。ハリがあって根元が紫色のキレイなアスパラガスが箱の中にごろりと横になっています。忙しいところにお邪魔したなと思っていると、「これを食べてみて」と、新鮮なアスパラガスを両手でパキッ。 アスパラガスの断面からは水が滴り落ちていて手も濡れて。青草のような風味とほんのり甘い汁、身が詰まっていながら繊維を感じさせない柔らかい食感。一瞬、小学校の帰り道に姉に教えられてあぜに生えていたイタドリ(野草)をかじった昔のことを思い出しました。それにしても全然筋張ってないし、おいしい。チョコをかけてみても以外と合うかも、なんて考えて楽しくなりました。

アスパラガスのポン酢和えと、直売所

取材中、料理方法の話になった時のこと、「このまま切ってさっと茹でてポン酢をかけてちりめんじゃこをかけて、好みでマヨネーズをかけて食べる」のがお勧めと教えてくれた河野さん。「(ちりめんじゃこもアスパラも)北浦で取れるものばかりですね、ぜいたくですね」と言うと、「元々自分が食べるものを作るために農業を始めたからね。他にもいろいろ作っていますよ。余計にできたら直売所に持って行って売るんですよ」。

河野さんは朝8時頃直売所に野菜を出荷するのが日課です。家から徒歩1分、国道沿いの小さな直売所。「結構なくなってることも多いんですよ」。今回の取材中、河野さんは孫のような年齢の私にまで終始丁寧な言葉使いをしてくださいました。身が引き締まる思いで、お話させて頂きました。
家に帰ってからお土産に頂いたアスパラガスで河野さんに教わった「アスパラガスのポン酢和え」にしていただきました。ご馳走さまでした。

無農薬栽培を目指して、実験中

河野さんのハウスの中では、現在異なる二つの栽培方法でアスパラガスを栽培中です。3分の1の面積はいわゆる慣行農法でこれまで通り土壌消毒から農薬・化学肥料を使っての栽培。そして残りの3分の2は、無農薬・無化学肥料栽培を実施中。今年の1月に取り組み始めたこの栽培方法。肥料は米ぬかと天然魚の魚かすがベースの有機質肥料。先に熊本まで行ってこの肥料を施肥している畑も見てきて、導入しているそうです。色も香りも全然違う2種類の畝。有機質肥料のほうは表土が淡いベージュ色で、まるでお漬け物のようなほんのり甘い香り。

効果は早くも現れています。「去年まで不作だった西側の畑が何となく量が増えた気がする」そうですが、「アスパラガスは去年蓄えた栄養で育つ」そうで、本当の成果が発揮されるのはこれから。その後の変化が見たくて、また来年の11月にも来ていいですか?と訊ねると、いいよ、と即返事を頂きました。土の違いもみたいし、食べ比べもしたいな。河野さん、またお伺いする日を楽しみにしてますね!

  • ブログページ―おいしい野菜の見え方
  • 取材:大角恭代

    小林市在住。大学卒業後、㈱ファーストリテイリング勤務。2011年2月Uターン。野菜ソムリエ。たまたま食べた無農薬無化学肥料栽培の文旦に衝撃を受け、おいしい野菜の育ち方に興味をもつ。おいしいと思う野菜があると畑にいき、生産者と想いを語る。

    夢は『いつでもどこでもおいしい野菜が食べたい、広めたい』。

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