夢を咲かせたい 真冬の菜の花 コウサイタイ-新地学

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新地学(しんちまなぶ)
三股町出身、在住。都城農業高校卒業後、実業団のマラソンランナーになる。20代半ばで父親の看護をきっかけにUターン。その後農業を本格的に学び始め、現在の農業スタイルに定まって約7年。母親と一緒に少量多品種の野菜の栽培・出荷に取り組む。毎月第4日用「みまたん駅前よかもん市」会長も務める。

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  • 株式会社バブターズ
  • 【住所】
    宮崎県都城市久保原町9-3-32
  • 【電話番号】
    070-6592-8210
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夢を咲かせたい 真冬の菜の花 コウサイタイ-新地学
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真冬に収穫する菜の花

新地さんとコウサイタイの出会いは、新地さんが実業団のランナーとして活躍していた20才の頃。いずれは農業をやりたいという思いがありその頃から野菜の情報を集めていました。実業団のあった北九州市内のデパートの野菜売り場も定期的にパトロール。そんな中で「これは何だろう」と目が止まったのが、美しく陳列されていたコウサイタイでした。調べると都城の気候に合っている事もわかり、20代半ばでUターンしてすぐ、コウサイタイの栽培をスタート。今では栽培暦20年以上のベテランです。
「始めは植え付け量も少なかったけどね」。畑一面に広がる黄色い菜の花を見ると「取り方が追いつかないと花が咲くんですよ」。

県外のレストランを始め個人に宅配で野菜を販売する新地さん。コウサイタイはお客さんからの引き合いも強く、今では畑一面にコウサイタイを植えています。
畑でそのまま食べさせてもらいました。甘みと、ワラビのような少しねっとりした食感が特徴的で、菜の花独特の苦みはない。花が咲いたものも苦みはありませんでしたが、新地さんに食べ頃を訊ねるとやはりそこは花が咲く直前とのこと。「10度以下が10日以上続くと花芽が分けつしてトウ立ちがはじまり、出荷できるような形状になります。11月から都城盆地はまさにそういう気温が続くため、12月頃から出荷できるようになる」。コウサイタイは3月まで出荷が続きます。

灰で甘くなった ほうれん草

都城盆地の広がる先に、どんとそびえる霧島連山。残念ながら撮影時には黄砂がかかっていて見えませんでしたが、新地さんの畑からは高千穂峰が存分に眺められます。山頂から山裾にかけての優美な曲線美が特徴的で、天孫降臨伝説も伝わる霊峰高千穂峰。その霧島連山の一つ新燃岳が2011年1月に噴火したのはもう4年前。
「灰が降る前と後とで、甘さが全然違う。甘くなったんですよ。こんなこと言ってる人他におらんけどね、全然違うよ」。「マグマにはミネラルがたっぷり含まれている。美味しい野菜には(ミネラルといわれる)土壌中の微量要素が必要だけど、今畑にはそれがたっぷりあるんですよ」。

畑で草と共生する新地さんのほうれん草。スーパーで売っているものと比べると背丈は低めで、葉と茎に厚みがあり、重心を下に据えどっしりとした形。ずっと同じことをやっていると見えてくることがあるんですよ、という言葉が印象的でした。
新地さんの畑ではその他に、そのまま畑にすき込んだ野菜、酵素たっぷりの米ぬか、枯れ草を焼いた灰、竹粉、草や野菜の残さを切り返して作った腐植、などを畑の状態を見ながら使います。メモを取っていると「畑を耕耘し過ぎないのも大事にしているよ」と優しく声をかけてくれました。

自然なスピードで育つ、自然栽培

新地さんの畑は草だらけ。コウサイタイやほうれん草、大根やニンジン、里芋の周りにはいわゆる雑草が生えています。
畑には草を生やしているんですね?と訊ねると「手が回らなくて結果的に草が生えているというのもあるんだけどね」と笑いながら前置きを一言、「草が土を耕してくれるんですよ。草は、根の先端から出す物質で土の中の有機物を分解してくれるんですよ。植物自身が自分が育ちやすい土にしてくれるんですよ。根も伸びる。化学肥料をあげる方法だと、野菜はがんばって根を延ばさなくても良くなります。」と一気に言い切る。そうして、だから形が綺麗ですよ、と言わんばかりに軽々と抜いてみせたニンジンや大根の美しいこと!ほうれん草と同様、盆地の冬の寒さにぐっと耐えるような姿の短い葉、その先にすらりと伸びたオレンジのニンジン。その出来映えは、新地さんの笑顔も物語っていました。

「草は霜や寒さで野菜がやられないように助けてくれます」。そういうと、子どものようなキラキラした瞳で野菜のこと、畑のことを次々に語ってくれました。
その畑で次に何を育てるかは地力を見て決めること。地力は野菜の色や形に表れること。これまで色々な畑を訪問したり、たくさんの人に教わりにいったりして自己流でこの栽培方法に行き着いたこと。不耕起栽培もやったことがあること。新地さんの畑ではそれなりに満足いく野菜が育つのに4〜5年、十分に満足できる野菜が育つまでには5〜6年かかるそうです。
新地さんは自らの農業を「自然栽培」と呼びます。新地さんの野菜を見ていると、野菜が自分本来のタイミングやスピードで、つまり野菜が「自然に」育つことを応援する農業なのだと思いました。

おいしい野菜は、体にも優しい

新地さんの畑は、ニンジンも大根も葉は根っこの部分の半分くらいの長さ。葉っぱが短いので、まだ種まきして日が浅いのかな?と思った程でした。それが抜いてみるとびっくり、想像していたサイズの2倍以上も大きな大根やニンジン。
収穫したものを新地さんの自宅に持ち帰り、洗ってニンジンをぽりっとかじり、そのジューシーさに驚きました。そのままかじりかけのニンジンを置いていたら、いつの間にかニンジンの切り口の下のほうには水がたまっていました。「肥料を与えないでゆっくりじっくり育つと、結果的に身がつまった野菜が出来るんですよ。苦みもなくておいしいし、食べる事で人の体をよくしてくれる野菜になるんです」。濃すぎる緑色や食後に残る苦みは、窒素分をたくさん与えられて育った野菜で体には良くない、と。

自宅のリビングで新地さんの座椅子から手が届くところには農業全書がずらり。その横には種がたくさん入った箱。
家に帰って大根とほうれん草を頂きました。大根もニンジン同様その中に水をめいっぱいたくわえていて、千切りにして大根サラダで頂きました。また一口サイズに切って煮込んでも煮崩れしないまま、カブのような食感になりました。
野菜本来の持つ力をいかに引き出してあげられるか、またそういった野菜を広めるためにはどうしたら良いか。新地さんは仲間と一緒に販路開拓をすすめています。また昨年、新地さんは都城を中心に周辺企業や農業者で南九州連合隊、という組織を立ち上げました。ここから県外、国外へ広めることを視野にネットワークを広げています。

新規就農者のハードルを下げられないか

新地さんの目標は「農業で雇用を生む事」。「産地化、企業化を進めます」と意気込みは強い。東日本大震災以降、田舎に魅力を感じて移住してくる人、農業に魅力を感じて新規就農を目指す人が増えています。新地さんは次第に早口になりながら、「特に新規就農を目指す人たちの安定収入につながることがしたい」という言葉に力を込めました。安定した需要があって、栽培や収穫に手間がかからない作物を、自分の畑と栽培技術もあわせて提供したい、と。
新地さんが一番不安視するのは、農業技術のスキルアップをするのに金銭的な不安が足かせになるということ。新規就農はリスクが大きすぎるからそれを助けたい、という思いです。
「コウサイタイは種をまくタイミングが大事。暑すぎるとダメ。最高気温が28度くらいの時がベスト」「2月15日を過ぎるとコウサイタイは急に成長が早くなります」。

「コウサイタイは1〜2株で150g収穫できるんですよ。大きいものは1株300gも収穫できます」。「取ったところからまた伸びてきて、何度も収穫できるので、コウサイタイは1株でワンシーズンに1キロ以上も収穫できる。」コウタイサイのポテンシャルの話になると、新地さんの目は一層輝きを増します。
今のところ一品目で安定収入につながるのはオカワカメ、エシャロット(ラッキョウ)、コウサイタイ、ほうれん草などが有力とのこと。特にコウサイタイは12月から3月迄収穫し続けられるのでやりやすいのではと。会話しながら、確かめる様に数字がどんどん新地さんの口をついて出てきました。自らの野菜で販路を作って、引き継いで、仲間を増やしていく。「地元ラジオ局の天気予報のコーナーもやってるんですよ。びっくりでしょ」と子ども心を忘れないお茶目な様子に、コウサイタイの黄色い花が笑っているようでした。

  • ブログページ―おいしい野菜の見え方
  • 取材:大角恭代

    小林市在住。大学卒業後、㈱ファーストリテイリング勤務。2011年2月Uターン。野菜ソムリエ。たまたま食べた無農薬無化学肥料栽培の文旦に衝撃を受け、おいしい野菜の育ち方に興味をもつ。おいしいと思う野菜があると畑にいき、生産者と想いを語る。

    夢は『いつでもどこでもおいしい野菜が食べたい、広めたい』。

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