ライチは中国南方原産の果物。三木さんが産地訪問するベトナムやタイでは、「どの家の庭にもライチの木があり」、田園風景の一部になっているそうです。
思い起こすと、昔行った焼肉屋や学校給食で食べていた冷凍ライチは黒っぽい茶色でした。三木ファームのライチは鮮やかな赤色です。
綺麗な赤色の皮は鮮度の証で、冷凍したり日にちが経って鮮度が下がったりすると、どんどん色が茶色っぽくなってくるのだそうです。「ベトナムの市場でも、こんなに綺麗な色のライチはない」と三木さんも自信を見せます。
ゴツゴツしたライチの赤い皮をむくと、乳白色のぷるんとした果肉と甘い香りが溢れ出します。イチゴのようにジューシーで、絹ごし豆腐のように滑らかな果肉で、他にはない味と食感でした。初めて食べる人に驚きと感動もプレゼントするライチ。種もつるんと大きいので取り除き易くて、小さな子どもでも食べやすそうだなと思いました。
ライチの日持ちは常温で5〜7日くらいが目安。輸入ライチでは真似できないこの鮮度は、ミキファームの最大の魅力です。
ミキファームでは3町歩のハウスや畑を所有し、主にサツマイモやライチの栽培をしています。現在ライチ栽培用のハウスを新しく建設中で、来年にはライチの作付面積は現在の約二倍の面積になります。ライチは成木を植えるため、2018年頃から出荷量も飛躍的に伸びる予定です。三木さんがライチの生産を始めて約10年国産ライチ市場はまだまだ需要があり、とても今の面積では足りないようです。
「ライチをきっかけに、宮崎に、新富に来てくれると嬉しい」と笑顔を見せる三木さん。実際に鹿児島や福岡など県外ナンバーの車や、関西からのツアー旅行でライチ園にくる団体客も多く、来年は摘み取り園の面積も増やしていきます。
また、三木ファームでは丁寧に実の摘果も行うことで、中国人に「こんな大きいライチは見たことがない」と言われるほど大玉のライチを仕上げ、一つ一つ手摘みしてギフトにも対応しています。「外国産のライチは輸入の時に消毒されている」「安心して食べてもらいたい」と、宮崎で生産している強みを最大限に発揮して、お客さんにも喜んでもらえるのはライチ摘み取り園だと確信しています。
地元の高校を卒業後、芝の生産販売会社に入社した三木さん。会社が整理されることになり、昭和43年芝の生産をしていた父親と株式会社日向芝を立ち上げました。そこで生産した芝や農産物の販売会社として新たに次に立ち上げたのが現在ライチの生産・直売を行っている三木ファームです。 芝の生産現場で汗を流し、サツマイモの苗や玉ねぎの苗の生産も手がけ、ホームセンターなどへ卸しをするようになると、得意先から相談されたのが「マンゴーやライチの鉢植えを作って卸してみないか」という今までにない鉢植えでした。
「おもしろい、やってみよう」と早速取りかかりましたが、販売しても思ったほど売れない。自分のハウスに植えてマンゴーやライチの生産を行いましたが、販売が思ったほど伸びない。そこで閃いたのが摘み取り園でした。「マンゴーは柔らかいからできないけど、ライチは皮が硬いし摘み取り園をしたら面白いかもしれない」。よみは見事的中!来園者は増え続け、あわせてライチの販売量も伸び続けています。
三木さんに、「農家として成功する秘訣は何だと思うか」と質問すると、「自分も農家として成功したと言えないと思うが、これまでも失敗を積み重ねてきました。ただ目の前のことを一生懸命やっていたらこうなった」と。全ては自分次第で目の前に可能性はいくらでもあるよ、とハッパをかけられました。
「どこにもない」ものを作りたいという三木さん。「それじゃあ意味がない」「人と同じことをしていたらだめ」と常に面白いアイデアを考える達人です。今年、三木さんがライチ栽培でこだわっているのは「一年を通じて農薬を使わないライチ栽培」を実現すること。
元々東南アジア〜中国南部の産地では、日本の庭先にある柿の木のようにポピュラーで、大木に育ちたわわな実をつけるライチ。それを栽培しやすいように根域制限や剪定などの技術でハウスにあわせた低木に仕立てながらも、ライチが本来持っている力強さを引き出す栽培で、これまでも化学肥料は使わないで減農薬栽培に努めてきました。
冬場には稲わらをたっぷり根元に敷き、EM菌をいれて米ぬかや有機質肥料の発酵を促したり、海藻を濃縮したエキスを散布したり。カイガラムシ対策に特定の殺中剤だけを年に数回使うだけでしたが、その殺中剤も使わないで、今年は1月から7月まで無農薬栽培を実現しています。
栽培から販売まで一貫して行うミキファームに、日本人らしい細やかな気配りで外国の産地にはないライチ栽培を定着しようとしています。
ライチ摘み取り園は6月中旬から7月末まで。現在ミキファームでは娘の早苗さんも一緒になって毎日の作業をこなしています。早朝からライチを摘み取り、選別して出荷するスタッフのフォローをしながら、摘み取り園の受付や量り売りの対応をしてと、期間中大忙しの早苗さん。
ライチは夏の贈り物にも好評で、「ライチを贈った人が「始めて食べた、おいしい」って贈り先の人に喜ばれたことを嬉しそうに教えてくれる」と、生ライチがまだ珍しいこと、生ライチがこれからさらに広がっていく可能性を感じています。
三木さんは現在、国産ライチの新たな展開も思案中で、このお話がまた最高にワクワクしました。詳しくは伏せますが、ライチ摘み取り園を大消費地目指して県外でも展開していくことで、今まで宮崎までこれなかった人にも生ライチで驚きと感動を広げて行きたいと意欲的です。
最後に、来年ライチの摘み取りへ行こうと思っている人へ耳寄りなお知らせです。「早生のライチは小粒だけど、香りが良くて好評です。甘くて糖度も高くて、これを知っている人は毎年摘み取り園が開園してすぐに来園されます(早苗さん)」。早生ライチの収穫期は6月中旬から下旬まで。来年の6月が楽しみですね。