こだわりのハーブ飼料。おいしさを追求、宮崎ハーブ牛-藤原一信

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藤原 一信(ふじわら かずのぶ)

(有)藤原牧場 専務取締役。祖父母から続く藤原牧場の三代目。宮崎ハーブ牛生産者、販売、企画。やまんうえのお肉屋さんオーナー。

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こだわりのハーブ飼料。おいしさを追求、宮崎ハーブ牛-藤原一信
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ハーブ牛専門、やまんうえのお肉屋さん

カーナビに導かれ細い山道を進むと、牧場を通り抜け、見晴らしの良い丘に出ます。そこは藤原牧場直営、レストラン併設の直売所『やまんうえのお肉屋さん』。平日の13時、レストランでは女性グループやご夫婦がのんびりとお食事中でした。
メニュー表には、焼肉セットやステーキ、丼物、定食、カレーなど。写真とコメント付きであれもこれも美味しそうで目移りしてしまいます。

宮崎ハーブ牛のローストビーフ丼をいただきました。柔らかい赤身肉を噛みしめると、口の中に甘みが広がります。赤身らしい率直な旨みを感じつつ、柔らかくジューシーな肉質で心地よい口当たりのローストビーフ。ご飯にもよく合います、半熟卵をからめるとタレともよく合います。
他にも4種のお肉が選べる焼肉ランチが1600円から、一番人気のガーリックサイコロステーキも1300円と、味はもちろんそのお値段のリーズナブルさにも驚きます。「シンプルにハーブ牛の美味しさを味わってほしくて(やまんうえのお肉屋さんを)始めたんです」と藤原さん。バーベキューテラスや、テントや炭火焼セットの貸し出しもあり、先日は80名でバーベキューを楽しんだ団体さんもいたようです。

宮崎ハーブ牛とは

宮崎ハーブ牛は現在県内の16軒であわせて約7000頭を飼育。特徴的なのは4種のハーブをブレンドした独自の飼料を使うこと。宮崎ハーブ牛をはじめ、宮崎牛や神戸牛のように地域ブランドになっている牛肉は多いものの、「えさの規定がないんですよ」。よって農家ごとに味や脂身にバラツキが出やすい中、ハーブ牛は味の追求に取り組み、共通の飼料や管理マニュアルを使用しています。日当たりと風通しがよい牛舎で住環境を整え、共通の飼料で体を作ります。

和牛とホルスタイン種の交配で産まれる交雑種、がハーブ牛(交雑種)としてハーブ牛で最も多く流通しています。「口どけがよい和牛の良さと、脂肪が少なく赤身が多いホルスタイン種の両方の良さを引き継いだ牛」と藤原さん。試食させていただき「これはみんなが食べやすいお肉だね」と取材陣で一致。実際私は脂っこいお肉が苦手ですが、ここでいただいたステーキもカツサンドもどれも甘くしっとりながらしつこい脂っぽさはなく、ハーブ牛らしい美味しさを実感できました。余談ですが、交雑種だとお値段も和牛ほどは高くならないそうで、それもハーブ牛(交雑種)の嬉しいところ。

全頭殺処分を経験、一頭一頭の命を大事に

宮崎県では2010年に家畜伝染病の口蹄疫が猛威を振るい、特に高鍋町のある児湯地区では被害が著しく、藤原牧場も殺処分地域に入りました。1600頭の牛が0頭に。藤原さんが牛飼いになって一番苦しかったという9年目の夏。
高校でバスケに熱中していた藤原さんは大学もスポーツ漬けの日々を送り、卒業後はスポーツウェアの販売の仕事に就きましたが、1年後には牛飼いになることを決意。Uターンし実家の牧場に入社、一から牛のことを学びました。それからずっと牛飼いの日々が口蹄疫で一変しました。

「一頭一頭牛たちの命を食卓に届けるまで責任をもって全うさせるのが牛飼いの使命」と、飼育頭数も約1000頭に減らし、より管理が行き届きやすくなるようにしました。「その美味しさを伝えるお店が必要」だと直売所やレストランを構想したのも口蹄疫がきっかけでした。
そして、牛小屋が空になっている間に、群馬県の食肉学校へ食肉加工を学びに行き、修了後は週末を中心にキッチンカーでの営業を開始。始めの2〜3年はイベント出店などで徐々にハーブ牛を広め、そして4年前についにハーブ牛の直売所『やまんうえのお肉屋さん』をオープンしました。

体調管理システム導入により、より健やかな成長を

「牛を飼うというのは農業もするということ」と、牧草作りからハーブ牛の営業、レストランのメニュー開発まで毎日幅広い仕事をこなす藤原さん。「こいそがしいだけです」とさらっと笑い飛ばしますが、その忙しさは想像がつきません。牧場では現在6名の社員と一緒に1000頭を飼育。さらに、目が届かないこともあるから、と全頭に体調管理システムを装着しています。
「牛は大きくなりすぎると倒れやすくなり、自分で起き上がれないと4時間で死んでしまうんです。2017年に話を聞く機会があり、ピンときたので」、なんと即決したそうです。2018年に全頭に装着し、死に直結するような急な牛の異常や体調の変化をとらえることが出来るようになりました。全頭導入は全国でも初の試みでした。

システムには牛の「食事・飲水・動態・横臥・起立」など毎日の暮らしが常に記録され、一頭一頭のデータが蓄積されることで、目にはみえない体調の変化も素早く察知。また死につながるような急な異常はアラームが知らせ、夜中でもスタッフが急行出来るようになりました。「携帯でも常に見られるので安心です」。一頭一頭を大事にする藤原さん流の牛飼いです。

広がる夢。酪農からチーズやアイスも

レストラン前の広い庭にはバスケットゴールやペットのロバのサニーちゃんの小屋もあります。横にはおもちゃ小屋があり、バスケットボールや草そりバトミントン縄跳び・・・自由に遊べるおもちゃがいっぱい用意されています。
夕方や学校がお休みの日は近所の子どもたちも遊びにきます。「テラスで大人がバーベキューをゆっくり楽しんで、子どもたちも楽しめるように」と大部分が藤原さんの手作り。ちなみに庭に面したログハウス風のバーベキューテラスや机椅子も手作りだそうで、その器用さにもびっくり。

「(レストランでは)まかないで作り込んでできたメニューもあるんですよ」。バーベキュー用にお肉を買いに来てくれる人は多いが、もっといろんな牛肉料理を作ってもらいたい、「(レストランのメニューでは)お肉料理のヒントになるようなものを」と、常に新しいメニューの模索もしています。
今後の夢を尋ねると「酪農もやりたいんですよね。チーズとかアイスの加工も2〜3年のうちに作ってみたい」と断言。牛飼い、加工、牛の可能性は本当に広い!ハーブ牛のチーズとハーブ牛のソフトクリーム、食べたいなぁ。今からとっても楽しみです。

  • ブログページ―おいしい野菜の見え方
  • 取材:大角恭代

    小林市在住。大学卒業後、㈱ファーストリテイリング勤務。2011年2月Uターン。野菜ソムリエ。たまたま食べた無農薬無化学肥料栽培の文旦に衝撃を受け、おいしい野菜の育ち方に興味をもつ。おいしいと思う野菜があると畑にいき、生産者と想いを語る。

    夢は『いつでもどこでもおいしい野菜が食べたい、広めたい』。

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