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佐野 晴男 (さの はるお)
有限会社マルエス 代表取締役。本業は肉屋。ふとしたきっかけで野菜の栽培に取り組み始め、『おいしい野菜』の栽培方法の追求に夢中になる。2013年、門川町内で竹やぶを開墾して本格的に農業を開始。現在はキノコの廃菌床や、開墾の際に伐採した木の枝等炭素資材など、身近にある資材を主に活用して『たんじゅん農法(炭素循環農法)』に取り組む。

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野菜が美味しくなる事だけを考えて

『野菜が美味しくなる事だけを考えています』。昨夏友人から紹介してもらった、ソーシャルネットワークサービスFacebookの『マルエス自然農園』のページに綴られていた言葉。この言葉をみた瞬間ワクワクしました。「私と一緒だ!どこでどんな人が耕しているんだろう?どんな畑なんだろう?」。その後もFacebookで日々更新されていく情報。ますます「ここの畑に行きたい!」という気持ちが高まりました。

畑訪問を始めて一年半になりますが、そもそも私が畑訪問を始めたきっかけは、「おいしい野菜を食べたい!」という食いしん坊な思いからでした。そのために「おいしいと思った野菜が育った背景(肥料や栽培方法や環境)を知りたい」。なぜなら「同じように育てられた野菜は、同じようにおいしい野菜になるのでは?」という単純な発想からでした。農家さんにお願いして、野菜や畑のこと栽培のことなど、野菜に関する数々の知識や情報を教わるようになり、現在の仕事をするようになりました。マルエス自然農園への訪問は、本当に待ち遠しかったです。

注射嫌いで有名な佐野さん

畑の主は、佐野晴男さん。引き締まった細身の体に日焼けした肌、いかにも「若手農家」といった雰囲気。つばの広い麦わら帽子もよく似合って、40代後半という年齢にびっくりしました。名刺を頂いて驚きました。宮崎県門川町にある「県北のこだわりスーパー」として有名な「サンシールさの」の経営に携わる方でした。晴男さんは有限会社マルエスの代表取締役で、主に「サンシールさの」の精肉部門と、そのスーパー敷地内の百円ショップや靴屋や服屋などを経営。特に精肉部門には毎日出社し、佐野さん自ら包丁を握る日も多いそうです。聞けば、畑仕事の前に出社して朝礼に参加し、その後(主に日中)は畑仕事に出て、夜終礼に戻って参加、の毎日だとか。
春に畑を開墾してから、佐野さんにほとんど休みはありません。そこまで佐野さんを突き動かすものは何だろう?・・・実は、佐野さんは幼い頃から大の注射嫌い。それは社内でも有名で、知らない社員はいないそうです。「注射が嫌いやから医者に頼らないで生活したいとよね」と笑って話す佐野さん。どうやら、医者にかからないでも健康になれる野菜、健康で居続けられる野菜、というキーワードに導かれたようです。

天に向かうジャガイモと、レンコンの収穫

撮影を進めていると、ジャガイモ畑で「皆で食べてみようか」と優しい佐野さん。今年一番出来のよい作物にも関わらず、おしげもなく畑から抜き、作業小屋の釜で蒸してくださいました。蒸したてのジャガイモからは湯気がのぼり、皮は薄く所々おいしそうにめくれ上がり、ふっくら。実がしっかり詰まった、柔らかい味のジャガイモでした。撮影スタッフも次々におかわり。皮付きのままで、どんどん蒸しジャガイモは食べられていきました。
「いいジャガイモは葉っぱを見れば分かる」そうですが、真上から見ると本当にきれいに整った形をした葉っぱが同じような間隔で広がっていました。

葉脈も水が流れるように美しく走り、茎もスッと天に向かって伸びていて、ジャガイモがとっても気持ち良さそう。収穫したジャガイモのお肌はつるっとしていて薄いベージュ色。「いいジャガイモは皮も薄い」そうです。
また特筆すべきはマルエス農園のレンコン。事前取材の時に頂いたレンコンがあまりにも美味しかったので、撮影後私は社員の方と一緒にレンコン畑で収穫をさせてもらいました。長いものは1mくらい、太いものは直径10cmくらいの立派なレンコンを堀り上げることが出来、子どものようにはしゃいでしまいました。先に収穫されたレンコンは薄切りにして黄色いカゴに日干しされていました、彩りもかわいいし、これまた気持ち良さそう。

竹ヤブを開墾

2013年春、ダンプカーやショベルカーを使って開墾して誕生したマルエス農園。緩やかな斜面の中にある畑は、中央に設けられた通路に沿って左右に畝が伸びていました。この畑にいくためには急な坂を登ります。見晴らしがよく、とっても日当りが良いところです。「気持ちがいい、居心地がいい」。風通しもよく、お昼寝をしたくなるような畑でした。ここにきた人は皆が同じ感想。野菜たちも気持ちよく伸び伸び育てるところなんだろうな。
こちらの特徴は『土木作業』のような畑。まるで工事現場のようです。地力をつけるためにダンプやショベルカーを使って木材を埋めたり、水はけをよくするため畝間の溝にドリルで穴を空けたりします(私も挑戦しました!)。

また、まるで『自然界の縮図』のような畑です。隣町のキノコ業者からもらうキノコを出荷したあとに残る廃菌床や、畑を造成するときに伐採した木の枝や切りくずなど身近な資源を活用した土作り。キノコ菌は豊かな森をつくるのに倒木に付着して有機物の分解を促し、活動が終わったら自らも土に還ります。一つの命が次の命をつなぐ命のリレー。私たちの命もつないでくれます。だからこそこんなに気持ちのいい、居心地のいい畑なのかもしれませんね。

いずれはスーパーでも販売したい

「初めから、正しい方法じゃなくても、失敗しても、いいとよね(いいんですよ)」。同じようなペースで、思慮深くとつとつと語る佐野さん。前向きで地道に努力を続ける力強さを持つ佐野さん。その目線の先にはいつも消費者がいます。佐野さんが今の農法に至った理由を訪ねると「発酵野菜と腐敗野菜というのがあるのに気づいたから」。発酵野菜とは常温で放置しておくとからからに乾燥する野菜、常温で放置しておくとどろっと溶けて腐る野菜のことです。「3日で腐れていた野菜が、4~5日は余裕で保つようになった」のに驚いたとも。消費者のために健康によいのは『乾燥する野菜』。将来は、食物アレルギーの人でも食べられるような「本当に人間の食」を作りたいと何度も語ってくださいました。
イノシシが畑の一角を荒らせば「なぜそこが荒らされたか」を考え「水はけが悪い」ことを発見。またとにかくたくさんの品種の種をまいては「そばは高さが低いままだった。

開墾した際に土を上下ひっくり返したから微生物が少ない土だったのかも」「大豆は葉が茂ってばかりで実がならなかった。以外と肥えているのかも」。畑と植物と向き合い研究を続ける今。「うまくいかないのは問題ない。来年が楽しみなだけだ」と本当に楽しそうに取り組む佐野さんの姿に、また人が集まってきそうです。撮影日にも畑には沢山の人がいました。福岡から仲間が畑の様子を見に応援に駆けつけ、お休みの社員も手伝いにきていたりしました。
今後は、今必要としている人達に届けるため自然食野菜の専門店で、また自分の経営するお店でも販売していきたいと抱負を語ってくれた佐野さん。「自分が育てた野菜をどうして(どうやって料理して)食べるかな(食べようかな)」と言うと一番いい笑顔になりました。やっぱり美味しいって人を笑顔にする最高のキーワードです。

*現在、野菜は佐野さんの経営する『生活良品セリア門川店100円shop』にて一部販売中。

  • ブログページ―おいしい野菜の見え方
  • 取材:大角恭代

    小林市在住。大学卒業後、㈱ファーストリテイリング勤務。2011年2月Uターン。野菜ソムリエ。たまたま食べた無農薬無化学肥料栽培の文旦に衝撃を受け、おいしい野菜の育ち方に興味をもつ。おいしいと思う野菜があると畑にいき、生産者と想いを語る。

    夢は『いつでもどこでもおいしい野菜が食べたい、広めたい』。

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