producer_h01

producer_profile01

酒井 則員(さかい のりかず)

producer_profile02

アーカイブ (Archive)
  • producer_slide01
  • producer_slide02
  • producer_slide03
  • producer_slide04

ギフトにも人気の完熟マンゴー

とろけるような甘さはまるでスイーツ。マンゴーは熱帯アジア原産の果物で、食べ頃になると甘い香りを強く漂わせて、そのタイミングを教えてくれます。マンゴーは真ん中に楕円形の薄い種があるので、マンゴーの種を魚の背骨の様によけて三枚おろしにしたあと、皮をむいて食べやすい大きさに切っていただきます。
酒井さんのマンゴーは糖度17度以上。撮影日には糖度21度のマンゴーもありました。収穫して5日後くらいで、甘い香りがしてきたら食べ頃だと教えてもらいました。

パッションフルーツやドリアンのように見た目のインパクトと香りが強い南国の果物の中でも、マンゴー、特に日本で主流のアーウィン種のマンゴーはとても食べやすく、母の日や父の日からお中元など贈答品としても人気です。また酒井さんのところには「孫にマンゴーをたくさん送ってあげたい」と、かわいい孫へのプレゼントとしての注文も多いそうです。大人から小さな子どもまで沢山の人を笑顔にして、マンゴーってすごい。
現在酒井さんのマンゴーは顔が見える販売が中心です。マンゴーが実る前から注文を受け始め、収穫が始まると注文順に毎日出荷していきます。5月から7月半ば頃まで出荷は続きます。取材中も注文や問い合わせは続きました。

完熟が近づいたマンゴーを一瞬でよむ

酒井さんも主にアーウィン種を栽培。アーウィン種は完熟すると実が落下する性質があります。その性質を生かして、摘果して実の数をコントロールし、一つずつマンゴーにネットをかけて落下してくるのを待ちます。また見た目にもこだわり、特にそのネットをかけるタイミングや、落下した後の樹液の処理など繊細な手作業には驚きました。
マンゴーにネットをかけるタイミングは「実に赤みが入ってきたとき」。マンゴーは完熟までに何度も色が変化します。まずは緑色からうっすら紫色へ。そして薄い桃色がついてまた紫色になり、熟して糖度があがってくるとイチゴのような赤色がついて、一日もたたないうちに落下します。

マンゴーの表面を流れるようにすっと赤みが現れ伸びていくのですが、微かな色の違いで、色づき始めの赤色を見極めるのは至難の技でした。これを酒井さんは早足で歩きながら数メートル前から見つけては、ネットをかけていきます。直前にかけることで、マンゴーにネットの跡が残らないようにするという一工夫。ただ、「(赤色ばっかり見ているから)目が見えにくい、目が疲れる」と目をおさえます。
更に、せっかく綺麗に色付いた赤い皮が汚れないように、マンゴーがネットに落ちると上下を逆さまにして、落下後切り口から垂れる樹液が皮に垂れないようにします。酒井さんのハウスは全長77m、横24mのビックサイズ。収穫期には、これを一日二周して、上記の作業を繰り返すのが日課です。

原産地の気候を再現

就農して最初は失敗もありました。マンゴーが全部青いまま落ちたこともあります。それを乗り越え「いろいろな失敗をしましたが、樹の習性さえ分かってしまえば、何てことはない」と笑って、その後15年かけて辿り着いた今の栽培技術についても出し惜しみなく話してくださいました。土作りにはじまり、水やりのポイントからハウス内の適温まで。栽培方法のポイントは『原産地の気候を再現する栽培』です。
植物は、何千年何万年と気が遠くなるほど長い年月の中で子孫を残し続け、遺伝子をつなぎ続けて、今の野菜や果物の姿となりました。

『適地適作』という言葉があるように、原産地の気候や風土にあった環境を整えれば、植物本来の自分で育つ力が目覚めます。品種改良や栽培技術も日々進歩していますが、マンゴーそのものを理解して栽培に生かそうという酒井さんの考え方が好きだなぁと思いました。 酒井さんが一番気を使うのは水やりです。「樹に雨期がきたと思わせるんです。2時間くらい、水でハウスが浸かるくらい、どぼどぼ水をあげます」。
マンゴーは沖縄が露地栽培の北限とされ、宮崎ではハウスで栽培されます。酒井さんのガラス張りのハウスは運動会ができそうなくらい広くて、温度管理や開閉もセンサーで全自動。その中でハワイや南アジアの国々の気候にあわせた栽培管理を行います。

マンゴーチップや魚を中心になるべく自然に近い土づくり

酒井さんは、自ら研究を重ねて辿り着いた独自の方法で土作りをします。ポイントは有機資材だけを使って、なるべく自然に近い土づくりをすること。山からもってきたというハウスの土の上にふってあるパルプチップは、マンゴーを剪定した際に伐採した枝を乾燥させてチップ状に加工したもの。チップをはじめ、米ぬか、魚かす、いりこ、完熟堆肥などを肥料として使います。魚は、海が徒歩数メートルの距離にあるこの土地らしい肥料なのかもしれません。魚を使うと不思議と糖度があがるのだそうです。いりこは魚の中でも分解が早いため採用し、そのまま食べてもおいしいものを丸ごとそのまま使います。
また、完熟堆肥をまくのは、二年に一度。「入れすぎると角がはえる(形が悪くなる)」と、堆肥を入れすぎないように気を使います。

「形がいびつなのは土壌のバランスが悪いから、そうなってしまう」「色づきは良くなくても糖度は一緒だけど」と判断基準もハッキリしています。
また、ハウス内で実地検証して集めたデータを元に、その時々のハウスの状況も加味してハウス内を管理していきます。「マンゴーが縦太りしたら、次は横太りするから、横太りしやすいように室温を28〜29度に」と設定温度をかえ、「昼は25度を下がるとよくない」と急な天気の崩れで室温が下がりそうになると、そのほうが早いからと手作業でハウスを閉めることもあります。
話を聞いていると、温度や時間など数字がどんどん口をついて出てきます。どれだけのデータを蓄積したのか、何通りのやり方を試したのか、酒井さん自身でも数え切れないようです。

マンゴーの次にくるものは?

酒井果樹園は柑橘専門農家でしたが、約30年前、先代の時にマンゴーを植樹。先進地沖縄に足を運び勉強を重ね、宮崎県でのマンゴー栽培の先駆けとなりました。大きな樹が枝をいっぱいにひろげ、今までみたマンゴーのどこよりも高いところに実がなっています。所々、枝をかき分けながら歩きます。
実家の果樹園を継いだ理由を「マンゴーを食べたら美味しいと思ったから、これからはいけると思った」と酒井さん。最初にマンゴーを食べたのは高校生の時ですが、その時は全然おいしくなかったと振り返ります。

そうしてマンゴー栽培歴約15年。今では自らの栽培方法を他の農家に伝授し、収穫したマンゴーの販売も請け負うマンゴー栽培のプロ。ハウスには他にも両手に乗り切らないくらい大きなマンゴーや、アボガド、リンゴ色の洋梨のようなレンブ、ライチなど珍しい南国の樹、世界一辛いトウガラシ・・・など初めてみるものが沢山ありました。好奇心おう盛な酒井さん、「マンゴーの次のものをつくりたい」と調査、研究は続きます。
取材中、マンゴーをバナナのように皮をむいて食べるという、酒井さん提案の斬新な食べ方でマンゴーを頂きました。とろっとして繊維質が少ない優しい食感でした。かぶりつくと溢れる果汁にびっくりしました。ご馳走さまでした!

  • ブログページ―おいしい野菜の見え方
  • 取材:大角恭代

    小林市在住。大学卒業後、㈱ファーストリテイリング勤務。2011年2月Uターン。野菜ソムリエ。たまたま食べた無農薬無化学肥料栽培の文旦に衝撃を受け、おいしい野菜の育ち方に興味をもつ。おいしいと思う野菜があると畑にいき、生産者と想いを語る。

    夢は『いつでもどこでもおいしい野菜が食べたい、広めたい』。

PAGE TOP