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池田 誠(いけだ まこと)

1970年生、日南農林高校卒業。県外で働いていたが父親が体調を崩しUターン、実家を継ぐ。2012年シンガポールへ初出荷、翌年法人化。2014年から加工品開発にも着手。2015年8月「電子レンジで簡単ふかしいも」が経済産業省 日本が誇るふるさと名物500品目に選定。

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なんでもない自分でも、ここまできた

直近の5年間で、売上10倍、利益10倍、雇用10倍!自社農場に加え契約農家約50軒、栽培面積300ha以上、直売率100%!全国のスーパーや百貨店、インターネットなどでサツマイモや加工品やサラダゴボウを販売中の同社。実績はもちろん、お話を伺っていてこの勢いは衰えないんだろうなということを、根拠なく確信しました。
池田さんが強調したのは「自分は特別な存在ではない」ということ。会社も議員も世襲が目立ちますが、自分は農協に出荷するごく普通の農家の生まれです、と。カリスマ性があったわけでもなく、ただ思いがあって、人が集まって支えてくれてここまで来れた、と軌跡を淡々と語ってくださいました。もちろん確執や足を引っ張られて悔しい思いもたくさんしたはず。でもそんなものも、どんどん超えてきたんだろうなと思いました。

現在正社員9名、パート13名、今年は更に10名を雇用予定。社員の平均年齢は27歳、それぞれ得意分野で能力を発揮します。今年建てた新事務所とキラキラした瞳の社員たち。取材中、会話や笑顔からスタッフ達への池田さんの絶対的信頼と、それに応える信頼関係を目の当たりにする場面がいくつもありました。
会社の成長は目を見張るものがありますが、それ以上に「なんでもない自分でもここまでできた」ことも財産。「真似しなかったからこそ、ここまでこれた」と池田さん。
自分の思いも大事に、信念を通すことを教わりました。現在まだ45歳。

さつまいもの展開

青果販売のさつまいもは現在6種。さつまいもを知って「◯◯(品種)がいい!」と選んでもらって、もっと好きになってほしいという池田さんの願いが込められています。昔懐かしい味わい宮崎紅から、煮たり焼いたり万能な紅はるか、東京で人気の安納紅。また、繊維質が少なくてなめらかな舌触りのシルクスイートは現在人気上昇中でお勧めだそうです。確かに、焼き芋にすると安納芋のようにしっとり感がありながら、紅はるかのように冷めてもおいしくて、人気があるのもうなずけます。
パッケージや販促物には、それぞれの品種の味わいの特徴とそれが伝わるコピーやキャラクター、池田さんファミリーの顔写真などを掲載しています。

池田さんは、顔の見える野菜「地産地消」の考えをそのままに、海外にも販売網を広げています。近い将来、さつまいもの外袋に印刷されたバーコードを読み取ると畑のライブ映像にアクセスできるシステムを導入する予定と聞いて嬉しくなりました。
どんな場所でどんな人がどんな風に育てているか、で野菜の味わいは変わります。私は野菜を買うときに、色や形や香りや重量など感覚で得られる情報に加えて、産地情報も大事にしています。映像に畑の周りの様子や自然環境が映り、虫や風の音、人の声も聞けたら嬉しいなと想像が膨らみました。

食べる人のことを考えて、『小畝密植栽培』

直売を始めて変わったのは、栽培するさつまいもの大きさです。農協に出荷していたときは2Lの一本売りがメインでしたが、今は中サイズ以下の2〜3本入りの方がメインだそうです。『小畝密植栽培』(商標登録)という、苗の感覚を狭く栽培することでさつまいもを小さく育てる栽培法を開発・実践しています。
『小畝密植栽培』は植える本数も多く、栽培にかけるコストは上がります。それでも大事にしているのは買ってくれる人にあわせること、ニーズにあわせて栽培することです。売り先によって評価や価格は変わります。例えば市場では、店に並べたときに見栄えが良い大きめのサイズの評価が高くなります。

しかし、消費者が買いたいのは食べやすい小さいサイズで、池田さんは後者を目指します。商品開発にしてもこの消費者目線をものすごく大事にしているのが伝わってきました。
さつまいもは中南米が原産地で、やせた土でも育つ作物といわれ飢えから多くの人を救ってきました。直営農場では畑の天地返しをして虫のいない赤土を使い、鶏糞と牛糞と広島産の牡蠣を砕いたミネラル源を肥料に、化学肥料はなるべく使わないで育てています。皮までおいしく食べて欲しいからと、農薬は植え付け時期の数回のみで慣行栽培の半分以下に抑えます。頂いたさつまいもはどれも土臭さがなく、皮まで全部いただきました。

さつまいもの追熱

さつまいもやかぼちゃは収穫後貯蔵すると、適度に水分がぬけ糖度もあがります。くしまアオイファームのさつまいもは最高糖度60度!二階建ての事務所の横に立つ大きな貯蔵庫は事務所と同じくらいの大きさです。中には収穫用のコンテナがうず高く積み上げられていました。
ここで13〜14℃で湿度90%の状態に40日ほど置き、追熟してホクホクした甘いさつまいもにしてから出荷します。特に冬場はさつまいもが傷みやすいので湿度管理が重要だそうです。
収穫したてのさつまいもは、しっとりとした食感と優しい甘さで、皮の色も鮮やかです。

衣替えしたての今は、収穫したてのさっぱりした味わいも好きですが、これから寒くなるとやはりホクホクした甘いさつまいもが食べたくなるんだろうな。
今年、池田さんは大束駅の近くに4000坪の広大な土地を購入しました。遠くに見える柵までが敷地だと聞いてびっくり。ここに250トン貯蔵可能な最新鋭の貯蔵冷蔵庫付き出荷場を作るそうです(3年後に追加で750トン貯蔵可能な施設を作る予定!)。農家が収穫後そのまま持ち込め、洗いから貯蔵まで一連の流れができる施設を作ることで、品質も向上させ量産に弾みをつけます。来年稼働予定です。

くしまを世界一のさつまいもの産地にするために

青果に加えて加工品も、さつまいもを手軽でおいしく食べられる工夫がたくさん。『電子レンジで簡単ふかしいも』は、電子レンジ専用の袋にさつまいもが入った一品で、電子レンジで2〜3分加熱するだけでホクホクしたふかしいもが完成します。また冷凍の『デザぽて』は自然解凍してアイスのように食べたり、フライドポテトにしたり、いろいろな食べ方ができます。他にも『皮付き干し芋』や、『トルネードポテト』、『冷やし焼き芋』など加工品も様々。
店頭販売にも積極的に参加して消費者の声を聞き、そのまま来年の作付けに反映させます。そのスピードも持ち味です。また海外での販売会にも参加します。スイートポテトの名のごとく「はちみつが入ってるの?」と、その甘さに驚かれるそうです。

現在、ベトナム、香港、シンガポールにも販路を広げており、海外での売り上げ比率を今の10%から3年後には30%に増やしたい、と池田さん。いずれはベトナムに自社農地をもちたい、と近々ベトナム人の農業研修生も受け入れる予定です。
九州初の農業企業での上場を目指して、そんな企業がある串間が世界一のさつまいもの産地と呼ばれるようになったら、世界中から人が訪れる串間になったら・・・。夢は大きく。言葉も姿勢も実直な池田さん。夢も現実に。駆け足で進みますがまだまだ疲れは見えません。

  • ブログページ―おいしい野菜の見え方
  • 取材:大角恭代

    小林市在住。大学卒業後、㈱ファーストリテイリング勤務。2011年2月Uターン。野菜ソムリエ。たまたま食べた無農薬無化学肥料栽培の文旦に衝撃を受け、おいしい野菜の育ち方に興味をもつ。おいしいと思う野菜があると畑にいき、生産者と想いを語る。

    夢は『いつでもどこでもおいしい野菜が食べたい、広めたい』。

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