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甲斐 鉄也(かい てつや)

一心園代表、1970年日之影町生まれ。九州大学農学部卒。
「中途半端にしたくない」と26歳で帰郷し実家の茶園を継ぐ。
土作りからこだわり、理想の釜炒り茶の味を追求中。

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【住所】
〒882-0401
宮崎県西臼杵郡日之影町大字七折9323

【TEL】
0982-87-2643

【FAX】
0982-87-2648

【E-Mail】
info@issin-en.com

【HP】
http://www.issin-en.com/

【販売先】
・道の駅青雲橋(日之影町)
・日之影温泉駅(日之影町)
※他町内外各所、海外でも販売
ウェブショップ

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毎日飲みたいお茶〜「グレート・テイスト・アワード」お墨付き〜

「旅行から帰ったら、まず(自分のお茶を)飲む」という甲斐さん。起床してお茶を煎れるところから、1日が始まります。食事の時も欠かさず、1日に5〜6杯は飲みます。小さい時から飲んでいるお茶は日常に欠かせないもの。だからこそ味にこだわります。
甲斐さんがUターンしてから、イギリスの食品コンテスト『グレート・テイスト・アワード』に毎年出品するようになりました。パッケージなど見た目ではなく、純粋に味や香りなどの味覚だけで評価されるコンテストです。

何よりも味を追求したい、そう願う甲斐さん。これまで何度も星を獲得した受賞作「月の雫(特選)」に、小さく金色の星印が光ります。今年の新茶も出品します。
一心園のお茶は、素直に「おいしい」と言いたくなるお茶です。釜炒り茶らしくすっと立つ香りの中にほんのり渋みがあって、飲むと喉元にしっかり旨みが残ります。ちょっとした渋みがあるからこそ際立つお茶の旨み。「渋みも必要なんです」と微笑む、甲斐さんのこだわりです。

日本のマチュピチュで、無農薬栽培にチャレンジ

一心園の茶畑はまさに絶景!工場の裏山に広がる茶畑は、急斜面の畑。畝間に標高差。空中都市マチュピチュを彷彿させる景色を前に、足がすくみました。
茶畑を横切るように作られた一本道は、柵もなくまさに断崖絶壁。国道を走るようにすいすい運転する甲斐さん。車内の取手を握る手に、力が入りました。
ここでは堆肥振りから茶摘みまで全ての作業が手作業と聞いて納得。畑の土はフカフカで、がっちり根付いたお茶の木につかまりながら、足を取られないよう、一歩一歩下っていきました。

この茶山を拓いたのはお父さんの一心さん。約40年前に、化学肥料や農薬の害について考えるようになり、無農薬栽培に挑戦を始めました。その時は上手くいかず断念したものの、平成に入って再チャレンジ。今では全ての茶畑で農薬や化学肥料を一切使わない栽培を実現しています。
甲斐さんも「農薬を使った栽培は初めから考えていなかった」と、無農薬栽培を継承。肥料作りや栽培管理について二人で意見を交えながら、「もっといい肥料を、美味しいお茶を」と、追求する毎日に終わりはありません。害虫が発生しても「(害虫の)天敵も自然界に存在するし、なんとかなるものです」。自然の力は偉大です。

昔の知恵。カヤを使った発酵草堆肥

「今のお茶には、昔のお茶の美味しさがない」。今のお茶には旨みが少ないという声があります。一心園では、昔ながらのカヤを使った自家製草堆肥作りをしています。堆肥小屋には、ぬるま湯のような温かさの発酵堆肥。懐かしい、枯れ草の乾いた香りがします。
堆肥を手に取り匂いを嗅ぐと「もう少しです」と甲斐さん。「味と成分に影響するから」と、発酵肥料の研究には特に力を入れています。
昔は山のカヤを刈り、畝間に敷くのが一般的でした。そこには微生物や小動物が集まり畑の養分の供給源となり、天然の旨み成分アミノ酸やミネラルをたっぷり吸った美味しいお茶ができていたと教わりました。

甲斐さんは、人の背丈・胴廻りと同じくらい大きなカヤの束を年間1200ロール以上調達し、主な栽培資材として使用。そのためカヤを土壌侵食防止も兼ねて畑の畦や斜面に植え、カヤ刈りは冬場の従業員の主な仕事になっています。
また地元の焼酎メーカーの焼酎かすや油かす、魚かすとあわせた自作のぼかし肥を年に数回振ったり、新しい土地では天地返しから始めたりと、土作りから惜しみなく時間を注ぎます。

200年の家族で作る、伝統の釜炒り茶

緑茶には、煎茶と釜炒り茶があります。宮崎県北部は日本でも貴重なまとまった釜炒り茶の産地で、日之影町でも昔から家庭で釜炒り茶が作られていました。甲斐家には古い抹茶用の石臼もあります。
甲斐家はお父さんの一心さんから茶業に専念。甲斐さんは茶園としては二代目ですが、ここは江戸時代からある集落で、工場や自宅は出城の跡地の小高い丘の上にあります。時代劇のような自宅には数え切れないほどご先祖様が並び、使い込んだ日本刀や槍に歴史の長さを感じました。

お土産に手作りの紫芋パンを持たせてくれたお母さんのくにこさん。味噌、醤油、水飴、など「昔は貧しかったから、なんでも全部手作りだった」と今でも作り続けています。
そんな環境で育った甲斐さんは福岡の大学に進学しましたが、「いずれは帰ろう」と決めていました。26歳の時に「このまま帰るのが遅くなったら、今の仕事も茶園もどちらも中途半端になる」と帰郷を決意。コンテストで受賞した事実にも安住せず、「もっといいものができる」と肥料や土作りに妥協なく没頭している様子が印象的でした。現在、年間雇用の従業員3名と家族4名、あわせて7名全員で分業して、毎日の仕事に取り掛かっています。

釜炒り茶の美味しい飲み方

釜炒り茶は煎茶よりも高めの温度で入れます。「時間があれば少し冷まして60度くらいで飲むのも美味しいけど、高い温度で入れたほうが香りが立つ」「夏にお勧めなのは水出し茶。苦味や渋みが出にくいので飲みやすいですよ」と釜炒り茶の味わい方を教わりました。
工場奥にある古いレンガ積みの平釜。手で『茶炒り』をする様子を再現したシンプルな作り。この最終工程は甲斐さんの担当です。空っぽの釜に火を入れるだけで、ふわっとお茶の香りが漂ってきます。

平釜の内側の上部が白っぽくなっているのはお茶に含まれる苦味の成分、カフェイン。釜の中で1時間くらい焦げないようにかき混ぜながら茶を炒り、真空に袋詰めして出荷します。
「旨み、渋み、バランス良くを大切にしています。(奥様が)旨みが強いお茶が好きじゃないし、これくらいかなと」。甲斐さんが目指す味は明確です。苗木を植える前の土にトラクターを入れるところから、仕上げの茶炒りまで、どれも理想の味を追求するために手を抜けません。
今年も茶摘みが始まりました。5月中旬頃まで約20日間に渡って続きます。

  • ブログページ―おいしい野菜の見え方
  • 取材:大角恭代

    小林市在住。大学卒業後、㈱ファーストリテイリング勤務。2011年2月Uターン。野菜ソムリエ。たまたま食べた無農薬無化学肥料栽培の文旦に衝撃を受け、おいしい野菜の育ち方に興味をもつ。おいしいと思う野菜があると畑にいき、生産者と想いを語る。

    夢は『いつでもどこでもおいしい野菜が食べたい、広めたい』。

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