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横山 洋一(よこやま よういち)

横山洋一 横山果樹園代表。
1977年生まれ、東京農業大学卒、脱サラ後実家のマンゴー農家を継ぎ、6年前からハウスでアボカド栽培を開始。
日本熱帯果樹協会宮崎支部 副会長。

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宮崎のアボカド農家

10月の宮崎空港。秋の装いがようやく定着する頃、お土産コーナーのショーケースに、一個ずつ丁寧に箱詰めされた大きなアボカドがお目見えします。大きさは通常のアボカドの約2倍。名を『ひなたプリンセス』。値段は、一般的な箱菓子が2つくらい買えそうな価格で、立ち止まって珍しそうに覗き込む人たち。
ギネスブックで「世界一栄養価が高い果物」と認定されたアボカド。横山さんは、早くからその魅力と可能性に惹かれ、6年前から試験栽培を開始。家業のマンゴー栽培の傍ら、小さなハウスで1本ずつ約20種類のアボカドを育て、栽培方法や栽培品種を4年間に渡り研究。

「アボカドは世界に3000種以上あり、今はハワイの在日の人たちが育てているアボカドが日本人の口にあうと人気なんですよ」。2年前に鉄骨製の大きなハウスを建てて、本格的に栽培に乗り出しました。
現在、宮崎でアボカドを販売しているのは横山果樹園だけ。今年は一ヶ月待たずして完売。販売2年目ですが、あまりの反響に販売先を増やす余裕はありません。

アボカドは食糧危機を救う

横山果樹園はもともとマンゴー農家。横山さんは55アールのハウスで両親と3人でマンゴーを育てながら、15アールのハウスで一人でアボカドを育てています。
アボカド栽培に力を入れている理由を尋ねると、「食糧危機を救う果物だから」と明快な回答。どんな質問にも、サクッと短時間で簡潔に答えてくれる横山さん。作業も移動もスピーディで無駄のない動きに見とれました。
アボカドは「世界一栄養価の高い果物」と言われ、何かあった時には「アボカドが食糧難を救ってくれる」と横山さん。

アボカドは樹上でならせ続けると徐々に熟していきますが、最長一年以上ならせ続けることができる品種もあるそうです。
アボカドはビタミンEやカリウム、マグネシウムなどたっぷりのミネラル類を含み、食物繊維も豊富。濃厚な味わいが美味しいアボカドですが、その脂質のほとんどは不飽和脂肪酸のためコレステロールが気になる人にも安心。高い抗酸化力で老化防止やお肌の回復にも役立つとも言われ、おいしさと機能性を兼ね備えた果物です。

おいしいアボカドは国産!

横山さんのアボカドを頂きました!ピンカートンというひょうたん型の種類のアボカドで、実は通常の約2倍、380gほどもある実。「あと7日、できれば10日後が食べごろ」と聞いていたので、実がどんどん柔らかくなっていくのを心配しながら、8日待って包丁を入れました。まさに植物のバター。カプレーゼにするとモッツアレラチーズと一緒に口の中でとろけていき、オリーブオイルにパラリと塩をかけるとウニのように濃厚な味わいで、旬の葉野菜のサラダにいれるとダントツの存在感。野菜らしいすっきりした後味もおもしろく、8日目より10日目のほうがさらに味の熟成が進みました。
横山さんのお勧めは「アボカドの天ぷら」「アボカドカレー」「アボカドの炒め物」。

私も天ぷらを作ってみました。外はカリッと、中はもったりとしてほんわか温かく、冬に食べたい天ぷらが出来ました。
他の外国産の農産物もそうですが、輸入アボカドは消毒やくん蒸処理が施されるため、未熟なうちに収穫したり、葉物野菜などと一緒に低温流通してしまい実が傷んでしまったり、と当たり外れがあります。横山果樹園では、輸入アボカドより+100日以上樹にならせてから収穫することを徹底し品質をキープ。もちろん消毒やくん蒸なく常温で流通もできる。やはり国産アボカドだけが、外れなく美味しく食べられるアボカドなのです。

ぐんぐん伸びるアボカド、新芽でコントロール

熱帯果樹らしく、アボカドは旺盛に育ちます。みかんや柿など身近な果樹は一年に一回、春にぐっと新枝を伸ばすところ、アボカドはさらに秋にも新枝を伸ばします。横山さんによると、生育スピードはみかんや柿の約2倍のスピード。確かに1年生木が腰丈くらいなのに対し、身長を軽く超えた大きさのアボカドでもまだ2年生木だそう。
横山さんのアボカドハウスは造成した山の上にあります。アボカドは山の土や耕作放棄地、でも育つとされていますが、根っこが浅く広がっているため台風で倒れたり樹が痛んだりする可能性があります。そのためここでは全てハウス内で栽培し、乾燥対策に土の上からウッドチップをかけていました。寒さに弱いので冬は加温も必要です。

アボカドはクスノキ科の果樹で、何も手をいれないでおくとクスノキのように真上に向かって育ちます。新芽の出る4月〜9月と秋には、新芽を摘んで枝を横に広げて、一枝ずつ上から吊っていく作業を繰り返します。12月〜3月になると花が咲き、ハチを入れて受粉をしてもらい、実をつける。開花の期間も長い。9月から出荷が始まります。
アボカドの栽培は日本では研究者も文献も限られます。4年間自分が試した結果を信じて新築のハウスを建て、本格栽培に入った横山さんのスピード感は、アボカド以上の成長スピード。

国産アボカドの供給基地に。まずは宮崎県内へ

アボカドは現在99%が輸入品で、輸入量は5年前の約2倍(財務省「貿易統計」)と、国内消費が右肩上がりに伸びています。実は横山さんは全国に店舗を持つ大手スーパーの元青果部担当。国産アボカドのニーズを察知していました。
横山さんは「マンゴーの次はアボカド」と名指しし、今後は随時自園のマンゴーもアボカドに転換していく予定です。山の上のハウスから見下ろす先に広がる横山果樹園のマンゴーのハウス群と、のどかな田園風景。

「いずれはあそこにもアボカドのハウスが作れる」と田んぼに視線を下ろすと他に質問はないか尋ねると、次々質問に答えてくれ、気がつくと短時間でたくさんの情報を頂きました。
来年は収量も10倍に。「今年は100個、来年は1000個」というのはアボカドの収穫予想数。「まずは、宮崎の人の分をしっかり作れるようにしたい」県外はその後でいい。あと5〜10年で、技術も収量も安定させ、値ごろ感のある販売が出来るように頑張ります、そう嬉しい言葉を聞きました。

  • ブログページ―おいしい野菜の見え方
  • 取材:大角恭代

    小林市在住。大学卒業後、㈱ファーストリテイリング勤務。2011年2月Uターン。野菜ソムリエ。たまたま食べた無農薬無化学肥料栽培の文旦に衝撃を受け、おいしい野菜の育ち方に興味をもつ。おいしいと思う野菜があると畑にいき、生産者と想いを語る。

    夢は『いつでもどこでもおいしい野菜が食べたい、広めたい』。

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