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荒川 裕亮・由香
(あらかわ ゆうすけ・ゆか)

宮崎市出身、在住。「虫と共存する循環型農業」を目指し、無農薬でのいちご栽培は3年目。水菜やレタスなど多品種の野菜も栽培し、いちごジャムやドライいちごなどの加工品作りも手がける。

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【住所】
宮崎市加江田5131

【電話番号】
0985-65-0841

【HP】
Facebookページはこちら

【販売店】
まつの(恒久店・西池店)、フーデリー(赤江店)、らいふのぱん、カントリーママ等(いずれも宮崎市)

【食べられるお店】
うどん茶房ふなや、パンカフェao、天空カフェジール、フジヤマプリン、ブルソボナール、木もれ日茶房ゆい、nakashima-tei 等
※時期によります、お問い合わせください 

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いちご畑のファーブル

「あっ、ヒメカメノコ。これはてんとう虫の仲間です」「このダニみたいな小ささの、飛び跳ねているのがトビムシです」「あ、ヒラタアブ(が飛んでいる)!アブラムシのいる葉っぱに卵を産むんですよ。ヒラタアブの幼虫がアブラムシを食べるんですよ」。まるで昆虫図鑑を見ているように、いちごと会話する荒川夫妻。
「農薬が効かない虫が増えている。ハウスの中で農薬を撒き続けると、その耐性をもった害虫だけが生き残り、結局農薬も効かなくなってしまう」。農薬を使えば病害虫を殺すことは容易いけど、いちごの益虫になる虫まで殺してしまい、さらに農薬を撒く悪循環になる。農薬を撒くことが根本解決にならないことに気付いた時、無農薬でいちごを育てることを決めました。

裕亮さんは、土作りや生物多様性について沢山の書物を読み、畑での研究実験を続けるうちに虫にも詳しくなり、ついたあだ名は「虫博士」。
「トビムシがたくさんいるところは葉っぱが綺麗。ここはたくさんいます」。トビムシはカビや微生物、有機物も食べて分解し、増殖します。増えたトビムシはクモや昆虫など益虫のえさにもなります。裕亮さんの話を聞いているうちに、豊かな生態系の中でのびのび育ついちごの姿が思い浮かびました。

おいしいいちごは強いいちご

あらかわ農園が目指すのは「有機物を土に還して微生物を豊かにし、虫や病気に強い作物づくり」。肥料は炭素と窒素を考慮しバランス良く土にすき込みます。草や野菜くずなど炭素の割合が多くなるよう植物をたっぷりと。また米ぬかや油かす、有機肥料など窒素の含有量が多い肥料を一緒にいれることで発酵を促し成長を助けます。これらをすきこんだ後、しばらく置いて発酵させます。
苗を植えた後には、米ぬかを少しと、土の表面に籾殻を巻きます。元々田んぼだったところをいちご畑に転換しているので、水はけが悪すぎて根腐れを起こす可能性がある一方で、いちごは根が浅く乾燥に弱い植物。籾殻は畑の水分調節をしながら生き物の住処にもなり、ゆっくりと分解されていきます。

植物は水と太陽の光で光合成をして糖分を作り出し、蓄積させ、おいしいいちごになります。裕亮さんは、液肥で太らせて大きくするだけだと日持ちがしない、と前置きすると、「いちごが光合成を盛んにできる体作りが必要だ」と、化学式も持ち出して理論からいちご栽培を語ってくださいました。耳障りのいい言葉や理想にとらわれず、数字や理論から正解を追求していく裕亮さん。おいしいいちごを育てることが、何より自分の農業を肯定することを知っています。

高温に苦労した苗作り

今年は特に、無農薬でいちごの苗作りをすることの難しさを痛感した年でした。親株から伸びた苗を植え替えたり、たくさんの苗床を作ったり、植え付け前に約八ヶ月かけて苗作りをしていきます。移植する時期に高温が続いたり、途中で枯れてしまうものもあったり、一筋縄ではいきません。いちごの苗作りはどのいちご農家でも心を砕くところですが、「無農薬だと特にその難しさが顕著にでます」と裕亮さん。
今回の取材は12月10日と20日。両日とも裕亮さんは長袖Tシャツで、由香さんは綿のチュニックに裸足でサンダル。特に温暖な青島地区とはいえ、暖房も焚かずにこの有様。「暑さに弱いいちごは、気温が高いと呼吸量が多く、せっかく光合成して蓄えた養分を消耗してしまう」と二人とも寂しそう。

例年だと9月になり朝晩が涼しくなると、病気なども止み、苗が元気になります。ところが今年は9月になってからも夜でも気温が下がらず、9月の定植の時期に入っても小さくて黒っぽい葉の苗のままでした。12月も気温が20度に届く日があり、実りも遅く、収穫が本格化するのは去年より一ヶ月遅れの一月以降になりそうです。
二回目の取材の時には、益虫がだいぶ増えてきたという報せがありました。いちごが綺麗な黄緑色の葉を出してくれるまで、みんなで優しく見守っています。

子どもたちに安心して食べさせられるものを

小さい頃祖父母の家に遊びに行くと、茶を炒ったり、野菜を収穫したり、農的な暮らしの中に楽しかった思い出がたくさん、と懐古する裕亮さん。農業はとても身近な存在でした。植物や土に触れたり体を動かすのも好きで、就農前に農業法人で半年間働いていた時も、芝や苗の手入れをしたり出荷作業をしたり楽しかった、と生き生きした表情で話してくださいました。
「就農できたのは、まわりの人たちのおかげですかね」。人やタイミングのご縁がつながり、周囲にいちご農家が多かったこともあり自然といちごを選択、宮崎市内のJAファームで農業を一から学びました。由香さんも農家の祖父母がおり農業に抵抗はなかったそうです。就農して9年、今では生後1ヶ月半の次女も含め3人の子どもに恵まれ5人家族になりました。「水菜の中に小松菜が生えてきている!」と子どもたちも野菜の名前を覚えてきています。

由香さんは子どもが生まれ、子どもたちの将来にもつながる農業を意識するようになりました。農薬は単体の成分ごとに一定期間の動物検査で安全性が示されているけど、もしそれを何世代にもわたってとったら?人間の体内に数種類の農薬が一緒に入ったらどうなる?「複合汚染」という本を読み、自分なりに考えるようになりました。子どもの子どもにも影響したら、子どもがかわいそう、と由香さん。子どもには安心して食べさせられるものを、とニンジンやレタスなど多品種の野菜栽培も始めました。

一緒に、素直に、バランスを取りながら

夫婦一緒に勉強熱心。裕亮さんが、文献を読んだり、時にはルーペや顕微鏡で微生物の動きを観察したりしながら、得た知識や学んだことを由香さんに話すうちに裕亮さんの考えがまとまり、由香さんも知識が増え、うまくいかないことがあると二人で考え、新しく挑戦してみたい技術があるときは由香さんに相談する。
子どももいるし、もちろん生活にはお金もかかる。かといって経済最優先で効率を優先した農業では子どものためにならない。「自分で調べて考えるのが何より大事。より安全でよりおいしいものは何か、みんなで考えて決めていけたらいいと思う。いいところのバランスを取りたいな」。裕亮さんの強い想いは、今や二人の理想の姿です。

「見た目は良くないけど」と初なりのいちごを2つ頂きました。かわいらしく赤く色づいたいちごは柔らかくてジューシー。一方は小さくて固く、オレンジがかって種がゴツゴツしているいちご。後者は小さないちごの株になったもので、見た目はイマイチですが、酸味も強く香り高く味が濃く、実がしっかり詰まっていて食べ応えがありました。「生きてるって味がしますね」、どちらも美味しく頂きました。

  • ブログページ―おいしい野菜の見え方
  • 取材:大角恭代

    小林市在住。大学卒業後、㈱ファーストリテイリング勤務。2011年2月Uターン。野菜ソムリエ。たまたま食べた無農薬無化学肥料栽培の文旦に衝撃を受け、おいしい野菜の育ち方に興味をもつ。おいしいと思う野菜があると畑にいき、生産者と想いを語る。

    夢は『いつでもどこでもおいしい野菜が食べたい、広めたい』。

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