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永迫 賢治(ながさこ けんじ)

体験型果樹園 永迫梨園2代目。宮崎県立高鍋農業高校卒業。九州のぶどう栽培の中心地、福岡県農業試験場勤務ののち、家業を継いで就農。梨、ぶどう、金柑(1月中旬〜3月)を栽培。

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【住所】
小林市大字東方5720-39

【電話番号】
0984-23-5103

【営業時間】
9:00~18:00
(例年 8月初旬〜10月末)

【HP】
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梨・ぶどうを求めて小林へ

毎年お盆が近づく頃になると、小林市内では梨やぶどう農園の直売所のシャッターが開きます。連日多くの車が立ち寄り、直売所に出入りする車で混雑する光景は小林の夏の盛りの風物詩。「◯◯果樹園」や「〇〇梨園」、肩書きはそれぞれですが、多くは梨とぶどうの専業農家です。
霧島連山・九州山地の麓にあり、県内で一番観光農園が多いといわれる小林市。そのうち梨やぶどうの収穫体験ができる観光農園は約10軒。

今回取材で訪れた永迫梨園も観光農園。市場出荷はせず、基本直売のみで毎年8月5日前後〜10月末頃にかけて開園、期間中無休。今年は開園初日が台風と重なったため、例年すぐに訪れるお客さんもお盆近くまでずれ込み、10日から20日頃まで目が回る忙しさだったおうです。幸いに台風の被害はなかった模様。
ただ、鹿やイタチ、アナグマ、カラス、いろんな動物たちが梨やぶどうを狙っています。山は生き物がたくさんいます。丁寧に袋を剥がし下からぶどうをかじる鹿に、上から突っつくカラス。「どうせなら一房を綺麗に食べて欲しいんですけどね」と永迫さんも苦笑い。

観光農園ならでは、気軽に入れる畑

取材は8月24日。お盆の忙しさから解放されたものの、まだまだお客さんの多い時期。早速畑に、と案内していただいてびっくり。
店舗から斜面を下ってすぐのところでキウイフルーツのアーチがお出迎え。アーチをくぐり抜け下りた先には、一面に広がる梨の天井。足元には整然と短く刈り揃えられた下草。その演出と整った美しい畑に、畑にいるとは思えない快適さを覚えました。梨の樹の下にシートを広げてピクニックでもしたいような気分にさせてくれます。

その奥のぶどう畑も同様で、ぶどうの房は中央に一列に並んでいます。このぶどうの棚は「8回は剪定している」。ぶどうは枝が伸びるのを誘引したり、摘粒したり梨よりも手間がかかるようです。
園内に吹く初秋を感じさせる涼しげな風。車で10分ほど下った小林市内の街の熱気から解放され、風が心地よい。汗が流れ落ちるような撮影を覚悟していったので、軽く拍子抜け。サンダルでも入れそうな畑の様子に、永迫さんの観光農園のプライドを見た気がしました。

「開拓魂」 ご近所とも切磋琢磨

永迫さんやスタッフの背中には「坂下伝統 開拓魂」の文字。永迫梨園は祖父が昭和22年にこの地に入植、父から梨園をはじめ、賢治さんで梨園2代目。坂下地区の梨は当初から市場で高値をつけるなど評価が高く、それなら直売しようと収穫体験のできる果樹園に進化、その後「ぶどうはないの?」というお客様の声にぶどうも始め現在に至ります。梨とぶどうの割合は6:4くらいで、ぶどうの生産量が増えているそうです。
現在坂下地区内には3軒の観光農園があり、全員このロゴ入りTシャツがユニフォーム。その3家族が集まる月一回の勉強会は別名「呑ん方(呑み会)」と呼ばれ、夜の懇親会までセット。毎月各自宅持ち回りで行われ、栽培技術や新しい品種の導入、今年の傾向など話題は様々。

近所で「お互いにライバル」だけど「うちも負けてられない」という気持ちになるそう。「もう親の代から30年以上続いている。坂下地区の伝統ですよ」と永迫さん。「今月ももうありましたよ」。
新しい品種をいち早く導入した農家がいれば、みんなで試食。「これはうちも作ろう」「これは人気が出る」一軒では試せないほどの情報が一年で集まります。「子どもが小さいときは子育てのアドバイスももらった、気が軽くなった」と奥さんも、家族全員で参加するのも伝統です。ただ、土作りは各農家ごとにコツがあるようで、永迫さんも「それは秘密」、とかわいらしくにっこり。

自然と触れ合う梨やぶどう狩り体験

永迫梨園では入園料無料、収穫した分だけは買い取りになる収穫体験がお勧め。「お孫さんやお子さんを連れてくる人が多い。収穫を楽しんでもらってます」とニッコリ。梨は1kg 500円〜、ぶどう1kg1,000円〜。訪問する時期によって収穫できる品種が異なります。
まだ夏の暑い日にはあっさりした甘さで水分たっぷりの「幸水」(8月初旬〜後半)、冷え込みがしっかりして秋の空気を感じられる頃には甘みが増した一番人気の品種「豊水」(8月末〜9月20日頃)。独特の食感で食べ応えのある「秋月」、他にも「新興」、「新高」などそれぞれ個性ある品種がお出迎え。

永迫さんに梨を選ぶポイントを尋ねると、「大きさと色」。梨にかけた紙袋をそっと破いて梨を見せてくれました。紙袋がパンパンに張るほど大きく、皮の青みが抜けて色が綺麗に表面に回っているものがいいそうです。
梨・ぶどう狩りは予約不要。当日農園で申し込みをすると、スタッフがその日収穫適期の畑へ案内してくれて、収穫する梨やぶどうの見極め方をレクチャー。後は畑で収穫したり、写真を撮ったり、虫を追いかけたり、それぞれ畑でのびのびと時間を過ごしていかれるそうです。

「体験」が人を田舎に呼ぶ

帰り際に直売所で珍しいものを見ました。秤の上に梨を1個乗せると「糖度12.6%、酸度0.13%、重量413g、等級 特秀」パパッと瞬時に表示。糖度には自信がある、と永迫さん。やはり甘いものを求める声が大きく、他との差別化を考えて導入したそうです。今注目の品種は「シャインマスカット。甘くて、完熟するまで樹にならせておくと本当に皮も薄く皮ごと食べられます」。
そんな話をしている間にも、鹿児島ナンバーや、宮崎ナンバー、次々に車が出入りします。話には聞いていたものの、この山奥にわざわざ来る車がこんなにあるなんて、大変失礼ながらもびっくりしました。感心していると「ここは行き止まりの地区ですよ」と笑う奥さん。街の方面からくると、直売所の手前数百メートルのところには離合困難な細道も通ります。

大学生風の若いカップルは、「今日は沢山取っていいからな」と彼氏が彼女にハサミとカゴを渡し。年配の夫婦は時間をかけて何枚もの伝票を書き支払いを済ませると「よろしくお願いします」とお辞儀。農作業の合間をぬけてきた風貌の男性は一声かけて贈答用を購入し、ものの2〜3分で退店。みんなその恵みを大切な人に共有したくて、直売所を訪れています。体験は人と人のつながりを強くする行動。観光農園や体験型の企画は、田舎に人を呼び寄せる大きな原動力になることを実感しました。

  • ブログページ―おいしい野菜の見え方
  • 取材:大角恭代

    小林市在住。大学卒業後、㈱ファーストリテイリング勤務。2011年2月Uターン。野菜ソムリエ。たまたま食べた無農薬無化学肥料栽培の文旦に衝撃を受け、おいしい野菜の育ち方に興味をもつ。おいしいと思う野菜があると畑にいき、生産者と想いを語る。

    夢は『いつでもどこでもおいしい野菜が食べたい、広めたい』。

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