ちいさなこだわり~食・旅・短歌~

渡邉円

1982年串間市生まれ。
ある日短歌と出会い帰郷。
美味しい食べ物に囲まれて、宮崎ライフを満喫中。
「都井岬短歌大会」「歌垣」など宮崎県内で短歌イベントを開催。

旅立ちはゴルゴンゾーラの香り

 

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東京に来て5日経ちました。

人の多さの安心感にひたっています。

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旅立ちの前夜は、期せずして古事記談義と相なりました。

引っ越しのたびに大事に連れてゆくわたしの「古事記ノート」および「風土記ノート」には、幼いなりに拙いなりに一生懸命楽しんで勉強した跡がみられます。お勤めをしながら通った、神戸女子大学のカルチャー。ふと開いたページには“2007年7月”と記されていました。

「どうしてわたしは古事記に興味を持ったんだろね」と言うわたしに、友人は「自分の知っている土地、宮崎に何かしらの縁を感じたいのだろ」と答えました。続けて「それは郷土愛なんだな」と。

なるほど、いいこと言うなぁ。

何かしらの縁、それは“物語”なんだと思うのです。語りたい。知りたい。そして自らも主人公であり得る“それぞれの土地の暮らしの物語”。

昔むかし、ながい旅に出るなんて思ってもいなかった初夏のある日。近江の木地師のかくれ里を訪ねたことがあります。そこには、やはり物語がありました。

<木地屋根元地という概念は分かりよく木地屋のふるさとといいかえてもよいがそれは近世この部族の人たちがつくりあげた共同幻想のシンボリズムである。しかし、その発想の背景には土地と無縁であった中世的な漂泊職人の精神的・経済的なアジール(避難場所)としてそこに身をゆだねなければならない歴史の悲しい宿命があったからである。木地師のことはまだ分からないことが随分とあるが近江の小椋谷はいわばその謎のベールに包まれた文字通りのかくれ里といってよい>昭和54年発行・暁教育図書『日本発見』第5号より

第55代文徳天皇(827~58)の第1皇子惟喬親王は聡明で人望がありました。周囲は、当然惟喬親王が皇太子になるものと思っていましたが、弟の惟仁親王がお立ちになりました。これは惟喬の母方が紀氏であり、惟仁親王の母方が藤原氏であったため力関係に左右されたものといわれています。

敗者となった惟喬がいつの間にか小椋谷に?筒井に?(こっちが本家だとお互いに譲らず今でも対立しているらしい)流れ付き、法華経の巻軸の形にヒントを得、椀などの木器を作る轆轤を発明します。それを付近のきこりに教えたのが「わが国の木地業の始まりである」という伝承になったそうです。同情を集める話であるし、話に尾鰭が付くことも世の習いであるでしょう。

わたしは、「事実」について「本当は…」などとうんぬん議論することに全く興味がありません。

出来事があった。

ただ、それだけのことです。当事者が2人いれば2通りの、5人いれば5通りの事実がそれぞれにあるのだと考えます。「事実」より「事実と信じる姿」がほんとうであると思うのです。誰かから見ると虚構に見えるかもしれない“心の真実”を物語ることことにより、漂流の民たちに希望の光が射したのです。光は時を経ても、それを物語るたびに再び現れます。

現代を生きる「旅人」のわたしたちには、共通の物語があります。それが古事記です。宮崎県が、神話のふるさとである縁。宮崎県民であるわたしたちは、どこに暮らしていても古事記の物語を思い出すたびに、ちょっと誇れるような気分になれます。

それは、飛行機に乗る日の朝にわざわざ食べに行った「大盛うどん」のあたたかさや、空港の喫茶店で偶然食べてすごーく美味しかったゴルゴンゾーラジェラートの口福を、誰かに伝えたいと思う気持ちと似ているように思われるのです。

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【引っ越しのたびに降り立つはじめての駅はじめての役を演じて】渡邊 円

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更新日時:2015.01.21(水) 22:00:53

時間力

新年あけましておめでとうございます。

実家のある串間市今町のお正月は大漁旗で彩られる。お餅とお蕎麦とお節とお酒とコタツとミカンと猫と家族と、のんびり穏やかなお正月を迎えることができました。

 

 

年末年始はジョン・キムさんの『断言しよう、人生は変えられるのだ。』をキムゼミに参加したつもりで読みました。

石井ゆかりさんの占い http://st.sakura.ne.jp/~iyukari/ によると、わたしは旅好きな双子座。毎日とても楽しく暮らしているのに、仕事も、友人にも、家族にも恵まれていて何も不満はないはずなのに、同じ場所に居続けることに倦んでいたわたしは、旅に出たくなりました。

すると、なんと。

部署異動があり、お勤めしたまま「長期出張」という“いっちょまえ”な大義名分をかかげて、東京に出張することになった!のです。

願ったり、叶ったり。

しばらく浮かれて過ごしたのだけど、直前になって出張ブルーに襲われました。ちゃんとお仕事全うできるのだろうか。軽薄なわたしが顔を出してしまうのではないか。

 

キムさんの本には、こうあります。

「自分が何に時間を割いているのか、何に時間を奪われているのかを徹底的に意識しなくてはならない。」

不安もあります。でも、やってみる。それで駄目なら、そこで考えたらいい。って言ってくれた友達がいました。もうずいぶん会っていないけど、その言葉でわたしの扉が開きました。そんな瞬間があったことを、最近よく思い出します。

元気でいるかな。また、会いたいな。

【窓際のシートにふかく根を張れば走り出すバス ゆめのくにゆき】(渡邊 円)

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更新日時:2015.01.09(金) 00:06:33

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